第6話:許しの言葉と、解けた鎖
あれからしばらく経っても、俺はルディウスを避けていた。
ルディウスも俺の様子を伺うように、無理に近づいては来ない。あの日激昂した俺を気遣っているのが痛いほど分かった。
冷静になってからも、二人から試すような真似で欺かれていた事実はどうしても許せなかった。だがそれ以上に、巻き込んで命を奪ってしまったメリーナへの罪悪感が、今も俺の胸を強く締め付けている。
……それに、何より。
あんな最低な手段だったとはいえ、ルディウスが俺を想ってくれていたという事実が……心の底から嬉しかったのも本当で。
怒り、罪悪感、そして安堵と歓喜。ぐちゃぐちゃに混ざり合った感情で頭がパンクしそうになり、自室で頭を抱えていた、その時だった。
コンコン。
静かなノックの音が響き、ドアが開く。入ってきた人物を見て、俺は思わずガタッと勢いよく立ち上がった。
「っ、メリーナ……!?」
動揺して固まる俺を見て、メリーナはふぅっと小さく息を吐くと、呆れたような優しい笑みを浮かべた。
「……ちょっと、話せるかな?」
逃げるべきか迷ったが、俺は意を決してコクリと頷いた。
二人は狭いベッドに並んで腰を下ろす。俺は彼女の顔を見ることができず、ただ自分の膝をじっと見つめていた。
沈黙を破ったのはメリーナだった。
「……ごめんなさい。ルディウスから、前世のことも含めて全部聞いたわ」
突然の謝罪に、俺は弾かれたように首を振った。
「い、いや……! 謝るのは俺の方だ! 俺の醜い嫉妬のせいで、前世で君の命を奪ったのは……俺なんだぞ!?」
罪悪感で押しつぶされそうになりながら叫ぶ俺に、メリーナは苦笑いを漏らした。
「たしかに、背中から刺されて殺されるとは思ってなかったわよ。……でもね、私とルディウスがやりすぎたっていう自覚はあるの。エミルを試すような真似をして狂わせちゃったんだから。……だから、これでおあいこにしない?」
「おあいこ……?」
「ええ。ルディウスのことは、私からも拳骨つきでたっぷり叱っておいたわ。だから……あいつのこと、許してあげられないかしら? 二人は、ちゃんと両想いなんだから」
聖女のような優しい微笑みを向けられ、俺の目から溢れた涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
前世で彼女を殺した自分。そんな俺に、どうしてこんなにも温かい言葉をかけられるのか。
「……いいのか……? そんな都合のいいこと……俺は、君にそんなこと言ってもらえるような人間じゃ——」
言いかけた俺の口元に、メリーナの人差し指がそっと添えられた。言葉が遮られる。
「もう、ごちゃごちゃ言わない! あなたは幸せになって良いのよ、エミル」
その言葉が胸に届いた瞬間、俺の心を黒く縛りつけていたすべての雑念と呪いが、すっと消えていくのが分かった。
涙で視界を歪ませながら、俺は絞り出すような声で呟いた。
「……ありがとう……っ、メリーナ……!」




