⑨ テオと城内探検
外は天気がよく晴れているが今日は外で遊ぶよりもリズにとってのお決まりの遊びの日。
お父様であるノアが討伐に出かけたことを知り、いつもの如く騎士たちの訓練場で突撃して遊んでいた。
「⋯⋯あ、いた。リズちゃん!」
「え、テオだ! どうしたの?」
「また、お父様とお母様が用事あって、一緒に連れてきてもらったんだ。⋯⋯その、リズちゃんと遊びたくて!」
「⋯⋯リズと遊びたくて来てくれたの?! 嬉しい!」
テオの言葉に木刀を置いて、笑みを浮かべ嬉しそうに彼に近づいた。
「あのね⋯⋯、お城広すぎて、僕ここしか分からなくてリズちゃんここにいたらいいなって思ってきたの。リズちゃんにお城の中教えて欲しい!」
「いいよー! 任せて案内してあげる! ちょっとまっててね!」
テオから少し離れると訓練場の端にある椅子に座らせていたモコちゃんを迎えに行った。その椅子はモコちゃんのためにだけ用意されておりモコちゃんの特等席だったりする。
「お待たせ! 出発しますよ、テオ!」
テオの方へ戻ってくると、モコを抱える反対の手で彼の手を取りトコトコリズは歩きだして城内探検に出かけるのだった。
訓練場から城内に戻るには外へでなければ戻れないため外のお庭を通る。
「リズちゃんは、いつもその人形持ってるね? かわいい人形。お名前は?」
「可愛いでしょ。3歳の誕生日にお父様が買ってくれたの。モコちゃんって言うの」
「モコちゃん! かわいい名前」
テオが笑ってくれたのが嬉しくて、「そうでしょー」とリズも笑う。
話しながら一緒に歩いていると、庭園に到着する。花壇のお花を指さす。
「テオみて! 綺麗なお花が咲いているでしょ? 昨日ここお手伝いして、元気の無い花を『元気になって』ってお願いしたらすごく綺麗に咲いたんだよー」
「えっ! リズちゃん魔法使えるんだね! すごい」
テオが、キラキラ目を輝かせて褒めてくれるので、小さく胸を張ってご満悦。
ふたりはそのまま城内へ戻って回廊を進んでいくいくつもの扉があり一つ一つ説明しながら奥へ進んでいく。そしてある扉のは前まで来ると、扉からそっと除き、「ここはこの前リズがおかしつくったちゅうぼう」と自慢げに話す。
「アリザ王女殿下。いらっしゃい。今日はお友達も一緒ですか」
「うん! お城を案内してるの!」
料理長が気がつき声をかけてくれた。
そんなふうに自慢のお城を、楽しく案内していった。
――その頃、訓練場には討伐を終えて戻ってきた騎士達とノアの姿があった。
討伐を終えて戻ってくるといつもなら、騎士達に突撃するリズがいて賑やかな声が聞こえてくるはずが、今日は妙に静かだ。
不思議に思い、覗いてみると騎士たちが訓練して交わる剣の音のみが響く。
「⋯⋯? 今日はリズ来ていないのか?」
近くの騎士に尋ねるようにノアは呟いた。
「アリザ王女殿下なら、この前来ていた男の子に城内を案内するのに出かけられました」
「あの男の子と⋯⋯?」
いつもなら自分を待って遊んでいるはずが、他の男の子とどこか行ってしまっていた。
ノアは「やれやれ」と小さく息を吐きつつ、少し眉をひそめるが、口元は緩め笑いながら、リズを探しに行くのだった。
リズを探しに回廊を歩いていたノアは向こうから、慌てた様子で探し回っているテオドールの両親を見つけた。
用事を終えて、またいなくなってしまった息子を探し回っている最中のようだ。
「あ⋯⋯ノア殿下っ! うちのテオドールがまたどこか行ってしまって⋯⋯」
「あぁ、心配いらない。うちのリズと一緒に城内探検しているらしい」
「えぇー! 王女殿下を連れ回しているなんて!」
「⋯⋯大丈夫ですよ。気にしないでください。あいつは楽しく自慢げに案内してると思うんで」
苦笑しつつノアはふたりと一緒に探すことにした。
しばらく回廊を歩いていると、奥の方から楽しそうな声が聞こえてくる。
この先はいつもミラのいる図書館の方である。探しつつも早くミラの元に戻りたいノアは自然に足を向けて歩いていたが、リズもこちらにいたようだ。
少し行くと、図書館の前の回廊の途中でトコトコ歩く2人を見つける。早歩きで背後まで行くとひょいとリズの首根っこを掴んでぶら下げる。
「あぁぁ〜⋯⋯おとーしゃまー。おかえりなさーい。⋯⋯テオをおかーしゃまのところに案内しようと思ってたの」
「⋯⋯ふーん。ならこのまま行こうか。すぐそこだ」
本当に目の前の扉を開ければ図書館である。早く会いたいノアはすぐ目の前の扉を開けた。
「テオ! 見てみて! 本がいっぱい。ここが図書館だよ! であっちにいるのがおかあさま。あそこがおかあさまの読書スペースなの! あとリズの遊び場もあるの」
こちらに気がついたミラがやってきた。
テオドールの両親とペコりと頭を下げ、挨拶を交わす。奥様の方は昔お茶会で仲良くなった令嬢だった。久しぶりに言葉を交わした。
「⋯⋯ミラローズ妃殿下。お久しぶりですね。うちのテオがすいません」
「大丈夫ですよ。リズも楽しかったみたいですし、気にしないで」
「ありがとうございます。⋯⋯テオ、帰るよ」
短いやり取りでも久々に交わせてほっこり微笑んだ。
テオドールに声をかけ挨拶をして帰ろうとするテオドール達一家をぶら下げられたままの状態でリズは「バイバイ! またね!」とニコニコしながら手を振った。
テオドール達一家な帰っていくと、ノアがミラへキスを落とす。
「⋯⋯おとーしゃま。リズを離してイチャイチャしてください」
掴まれたままだったリズは目の前で始まるイチャイチャにツッコミを入れる。するとパッと手が離されストンと床に着地したリズはニコリと笑い、自分の遊び場スペースへトコトコ歩いて両親から離れひとり遊びはじめるのだった。




