⑧ 庭師の手伝い
澄んだ青空が広がる中、今日元気にリズは相棒のモコちゃんを連れて庭園内を散策していた。
「わぁー、綺麗なお花だなぁ」
庭園に咲く花を見て呟く。色とりどりの花が咲き誇り園内を綺麗に彩っていた。
庭園内を進んでいくと、人影を発見する。
(あれは⋯⋯庭師?さんだ! お手伝い、リズにもできるかな)
リズはいつもひとりで手入れしていると聞いている庭師の姿を見つけると心を弾ませながら彼に近づいた。
ひょこと彼の手元を見る。
ハサミで“パチン”とお花の茎を整える手元をじーっと見つめているとリズの気配に気がついた庭師が、驚いたように目を見開いて、リズの方を見た。
「あ、アリザ王女殿下⋯⋯っ! どうされましたか」
「なにをしているの?」
リズの方を振り向くと目線を合わし、穏やかな笑みを向けた。
「お庭のお手入れですよ。綺麗に育ちますようにって願いを込めてお世話するんですよ」
「おねがいするの?」
リズはモコちゃんをぎゅっと抱きしめて、キラキラ目を輝かせた。
「リズもお手伝いしたい! おねがいする」
「王女殿下がお手伝いですか? ⋯⋯ふふ、いいですよ。一緒にお願いしましょうか」
「うん!」
庭師は快く頷くと、リズに小さなジョウロをお水を入れて渡してくれた。モコちゃんは汚れないように近くのベンチに座らせて見守っててもらう。
「こうして根元に優しくお水をあげるのですよ」
「こうかな? 元気に育つんだよ〜」
庭師に教えてもらいながら、一生懸命お水をあげていく。
お庭のお手入れを手伝うのが楽しくてニコニコ笑顔を浮かべお水をあげながらトコトコ歩いていた、その時だ。
「あれ、このお花⋯⋯元気ない?」
花壇の隅に茎がくたっと折れて、花びらも萎れ元気のない花があった。
リズは心配そうに花の前にしゃがみ込んだ。
「本当ですね、もうこの花はダメかもしれませんね」
庭師は静かにそういうと花に手を伸ばす。リズもそっと手を伸ばし花びらに手を添えた。
「⋯⋯でも、おねがいするんでしょ?元気そだってねって⋯⋯」
そう呟くと、そっと添えた手からリズは目映ゆい光を放つ。元気になって欲しいと願って魔法を使う。すると、花は元気を取り戻し、綺麗に咲き誇った。
「⋯⋯さすが、アリザ王女殿下ですね」
庭師は目の前で起こった奇跡に、信じられないといった顔で深く感動する。
綺麗にシャキっと咲き誇った花を見て、パッと名案を思いついたように目を輝かせた。
「このお花、お母様にあげていい? 花束つくってあげるの!」
「ミラローズ妃殿下にですか? ⋯⋯もちろんいいですよ。花束お作りになるならもう少し他のお花も入れましょう」
「リズがチョキンしていい?」
庭師は頷くとハサミをくれて切る位置を示して、元気にした花と、お水をあげたお花を選んでリズがチョキンと切って小さな花の束ができあがった。
「⋯⋯わぁー、かわいいお花! お母様喜ぶかな?」
「はい、お喜びになると思いますよ。王女殿下が世話したお花ですから」
「ありがとう!⋯⋯お母様に届けてくるね!」
ベンチで待っていたモコちゃんを抱き直し、お花を落とさないように大事に持つと、お庭からお母様の元へと向かった。
いつもの図書館スペースで読書をするミラと、その横にリズのお目付け役でもある侍女クロエが控えていた。
「おかーしゃまー! これどうぞ!」
リズはミラの目の前にへやってくると、花束を差し出した。
ミラは驚いたように目を丸くしたあと、ふわりと嬉しそうな笑みを浮かべた。
「とても綺麗ね。⋯⋯リズこれどうしたの?」
「お庭のお手入れ手伝ってきたの! それでね、元気なかったお花に『元気になって』ってお願いしたら綺麗に咲いたの!」
リズは自慢げに胸を張って話した。
この前は、厨房のお手伝いで今度は庭師のお手伝いと大人の1歩を踏みだして楽しく過ごしているようだ。
「魔法で⋯⋯だから元気な花なのね。ありがとうリズ。大切に飾るわ」
すぐにクロエが花瓶に綺麗に飾ってくれた。その花たちをみてミラは微笑む。
リズはお母様の喜ぶ顔に満足したが、いつも隣にいるはずの『あの人』がいないことに気がついた。
「そういえば⋯⋯おとーしゃまは?」
「⋯⋯お父様なら、『ルーカスのところに行ってくる』って出かけて行ったわ」
「きっと、ルーカス様のところにミラ様の惚気をお話に行ったのでしょうねー」
その光景を見た訳では無いが、クロエはルーカスの元へ行くと言うノアは惚気に言っていることを何となく察していた。
ミラたちはただ惚気に行っているんだと思っているが、ルーカスが、タダでは惚気させていないということはミラたちは知らない。
リズは(またお父様はリュカお兄ちゃんところにのろけに行ってるのかー。お兄ちゃんも大変だな〜⋯⋯まぁ、いっか⋯⋯)と思いながらお父様の行動を受け流しつつ、モコちゃんとミラ専用のスペースのすぐ横にある自分の遊び場スペースでモコちゃんと遊び始めるのだった。
ミラとクロエはその様子を微笑ましく見守り、ミラは本に視線をもどし、クロエは2人分のお茶を入れ直してそばに控えるのだった。




