⑬ 不敬な隣国王子の行方
テオドールに守られ、隣国の王子と別れたあとリズはテオとまだ見ぬ未知のエリアを城内探検することにした。
「リズも行ったことない、ひみつの場所探検しよー!」
手を繋ぎ出発した。
リズがテオの手を引いて向かったのは、普段あまり人の通ることのないお城の奥にある回廊だった。暗く不気味な雰囲気が漂うそこは回廊の端に甲冑がずらりと並んでいた。
リズはテオの手をギュッと握りしめる。少し怖がる様子を見せるリズにテオはギュッと握り返し1歩前を歩く。
「大丈夫だよ、リズちゃん。僕が付いてるからね」
騎士になると誓ったばかりのテオドールはちょっと緊張しながらも、頼もしくリードする様子を見せる。
リズはそんな後ろ姿をみて、(テオ、やっぱりかっこいい! リズをお守りしてくれる)と手を繋ぐ反対の手でギュッとモコちゃんをしっかり抱きしめながら、テオの頼もしさを噛み締める。
2人は先にある古い扉中を覗いたり、小さな隠し通路を見つけたりして、ハラハラドキドキの大冒険は満足して、見慣れた回廊まで戻ってきた。
リズは歩きながら、気になることを思い出した。
「そういえば、お父様はどうして失礼王子を探していたんだろう? お父様がそこまですることなんてほぼないのに、なんでだろ?」
「そんなに不思議なことなの? 不機嫌そうな感じだったけど⋯⋯」
「うん。いつもお母様の隣にいるのに。失礼王子探してたなんてなんか理由があるんだと思う。⋯⋯やっぱり気になる⋯⋯。リュカお兄ちゃんなら知ってるかも! 聞きに行こう!」
手を引いて、ノアのことを1番理解しているルーカスへ聞きに行くことにした。秘書官である彼なら、アルトとノアが一緒にいた理由も、知っているかもしれない。
リズはルーカスの元に突撃しに行った。
「リュカお兄ちゃーん! 聞きたいことあるのー! あ、この人はお母様のお兄さんのルーカスだよ! こっちはお友達のテオドール」
初対面だった、ことを思い出したリズは2人の紹介をする。テオドールはペコりとルーカスへ頭を下げる。
「おっ、リズと⋯⋯テオドールくん、こんにちは。聞きたいこと?」
「あのね、お父様のことなんだけど」
「⋯⋯ノア? 」
「うん、さっきね、お父様が、アルトお兄ちゃんと隣国の王子とかいう失礼王子のこと探してたのが気になって。いつもお母様と離れないのに⋯⋯」
娘にさえそんな疑問を抱かさせるほどのノアのミラローズへの溺愛はルーカスも承知だが、リズが言ったことに苦笑するしかなかった。
「⋯⋯リズ。あれでもちゃんと色々してるんだよ。⋯⋯お隣の国の王様が新しくなってその挨拶に来たんだ。その王様はノアの方が交流があってね、今回は大切な訪問だから、顔見知りのノアも一緒だったんだよ」
「⋯⋯そうだったんですね、でも、どうしてノア殿下とアルト殿下はあの王子のこと探してたんですか? ⋯⋯不機嫌そうで、ちょっと怖かったんですけど、僕」
「あははっ! 怖いね、想像つくなぁー。⋯⋯王子探してた理由だけど、本当は会議のあと、歳の近いリズと対面する予定になってたんだよ。だけどあのわがまま王子は『王女なんかと会いたくない』って逃げ出しててさ。それであの二人が追っかけて行ったんだ」
(なるほどー! だからお父様はアルトお兄ちゃんとあの失礼王子を探してたんだー! お母様と離されて仕事してた上に、王子が逃げ出したから、お父様は不機嫌だったのかー)リズはルーカスの話を聞いて頭の中で大人たちの事情が完全繋がった。
「じゃあ、あの失礼王子は、お父様に、捕まってどうしたの?」
「それは、隣国へ送り返したよ。リズに不敬働いたの知ったノアは相当怒ってたんだろうね、冷徹なオーラ纏って王子を見つけて捕まえて、王様ところまで連れてきたよ。ほらよくリズも後ろ襟掴まれて連れてかれるだろ? あんな風に。でも、リズにする時の方が優しさがあるけどね」
「お父様は、リズのことにも怒ってくれてたの?」
「そりゃね、あれはミラ命ではあるけど、ちゃんとリズはのことも愛してるからね。泣かされたこと知ってブチ切れてたみたいよ。アルトもビクビクしてたし。まぁ、それで連れてこられた王子だけど、ノアの怒りのオーラに涙目で帰ってきて、ことのあらましを聞いた王様にさらにこっぴどく怒られて大泣きして、そのまま強制的に王様と一緒に帰っていったよ」
ルーカスの話を聞いてテオドールは(ノア殿下を怒らせるようなことをしてはダメだ⋯⋯1番怒らせたら怖い⋯⋯リズちゃんのこともちゃんと守らなきゃ!)と密かにブルっと震えながら心に誓うのだった。
一方リズは(お父様、やっぱりリズのために怒っててくれてたんだ。あの失礼王子お父様に泣かされたってー、ふふっ、)と、ルーカスに出してもらったお菓子をもぐもぐしながら王子の不敬の行方に笑った。




