表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
余命半年の私に財産なんて必要ないと継母と妹に父の遺産をとられましたが、それは普通に窃盗です。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/16

7.帰り道にて

 騎士団によって、道中の安全は確認された。

 結局、私を狙っていたという盗賊は見つからなかったらしい。待ち構えていたという証拠もなく、もぬけの殻だったようだ。

 それは、予想通りではある。恐らくこちらに関しては、プロの暗殺者だったのだろう。


「騎士団が護衛についてくれたことで、とりあえずは安心ね?」

「そうですね。少なくとも、カルリアやクーレリアの手が及んでいるということはないでしょう。流石に、公的な機関を操れる力はないでしょうから」

「それはそうだと思うわ。オーヴァン伯爵家でも、騎士団を好きなように動かすことは難しいもの……」


 私はセオドアとともに、馬車に乗っていた。

 護衛には、ナルゼスさん率いる騎士団の隊がついている。警備としては、かなり厳重な方だ。


 重要なのは、騎士団が信頼できるということである。

 護衛を雇う場合、万が一ということがないとは言い切れない。カルリアやクーレリアも、流石に王都にまで手は及んでいないとは思うが。

 そこが騎士団であるならば、安心することができる。それを自由に動かすことができる者は、非常に数少ない。


「もっとも、ボルガー公爵のことは心配です。彼ならば、騎士団を自由に動かすことができるでしょうからね?」

「それはそうね。でも、その辺りに関してはセオドアが釘を刺しておいてくれたから、大丈夫なのではないかしら?」

「ええ、そう思っています。とはいえ、可能性はゼロではありませんからね……」


 セオドアは、ボルガー公爵のことを心配しているようだった。

 カルリアとクーレリアのことを気にかけているという公爵、それは確かに気になる所だ。

 ただ、彼に関しては国王様が抑えてくれているはずである。セオドアの発言によって、そうなっているはずだ。


「まあ、どの道、騎士団に二人の手が及んでいるというならば、助かる道なんてものはないわよね? それならそのことは、考えるだけ無駄なのではないかしら?」

「それは……そうかもしれませんね」

「あなたを巻き込んでしまったことは、申し訳ないけれど」

「いえ、僕にも無関係なことではありませんから」


 仮に騎士団が敵の場合、私達に対抗できる術はない。

 この馬車の運命さえも、今はナルゼスさんの隊が握っている。彼らがその気であるならば、私達の命はないといえるだろう。


 それならその可能性なんて、考えても仕方ない。私達は彼らを信じて、進んでいくべきなのだろう。少なくとも、今この時は。


「……馬車が止まったわね?」

「そのようです。まさかとは思いますが、僕の危惧が当たっていたのでしょうか?」

「そんなことはないと思いたいけれど……まあ、馬車が止まるなんて、そう珍しいことではないわ。何か問題でもあったのでしょう。馬の怪我とか、動物が通ったとか」


 私が話している最中、馬車が動きを止めた。

 それは不穏なものではあるが、元より馬車が止まることはない訳ではない。

 そう思っていると、戸が叩かれた。私がそれを開けると、ナルゼスさんがいた。彼は険しい顔をしている。


「失礼します、アルティア様、セオドア様。少し問題が発生したもので……」

「問題というと、何でしょうか? 動物でも出てきましたか?」

「そうですね。とても厄介というか、面倒な状況になりました。セオドア様の兄上、スヴェルツ様でしたか? 彼が現れました」

「兄上が?」


 ナルゼスさんの言葉に、私とセオドアは顔を見合わせることになった。

 スヴェルツが現れた、それは一体どういうことだろうか。彼は既に、帰っているものだと思ったのだが。


 もちろん、私達は王都で二回も夜を越したのだから、彼が行って帰ってくる余裕くらいはあるといえる。

 しかし、そのようなことをする理由がわからない。

 いや、スヴェルツの行動の理由なんて、最近はわからないことばかりか。ここで考えるよりも、本人に聞いてみる方が早いかもしれない。


「セオドア、行きましょうか?」

「ええ、そうですね」

「お二人は、私達の前には決して出ないでください。万が一ということもありますから」

「わかりました。スヴェルツも、警戒するべき相手でしょうからね」


 私とセオドアは、ナルゼスさんに先導されながら馬車から出た。

 すると、近くに馬車が止まっているのが見えた。その前方には、見知った顔がある。スヴェルツがいた。


「スヴェルツ……」

「兄上……」

「……」


 私とセオドアの顔を見て、スヴェルツはほんの少しだけばつが悪そうな顔をした。

 ただ彼は、すぐに首を横に振る。それは私達との決別を選択した、ということだろうか。

 状況からして、その可能性は高い。彼は襲撃に関しても、知っていたのだろうし。


「アルティア、二日振りか? 随分と遅い帰りじゃないか。セオドアと何をしていたんだ?」

「スヴェルツ、あなたなら色々と知っているのではないかしら? そもそも、セオドアを置いて帰るなんてどういうつもり?」

「子供でもあるまいし、セオドアも一人で帰ることくらいはできただろう? 俺は急用があっただけさ。セオドア、お前は知らなかったのかもしれないがな」


 スヴェルツは、私を糾弾するような口振りであった。

 周りに騎士団の目があるからだろうか。彼は核心には触れようとしない。


 しかしその反応からして、騎士団が取り込まれているということはなさそうだ。

 それは安心できる。だが油断はできない。ボルガー公爵がこれから働きかける可能性は、ないとは言えないのだから。


「しかし、アルティア。君がセオドアと王都に滞在して、実に二日もの間帰って来なかったといううのは、見逃せない事実だな。これは不貞であるといえる」

「スヴェルツ、あなたは何を言っているのかしら?」

「俺は君との婚約を破棄させてもらう。実の弟と浮気するような者を婚約者として、許容することはできないからな」

「それは……」


 スヴェルツは高らかに、婚約破棄を宣言した。

 やはり彼は、私のことを切り捨てるつもりのようだ。それはなんとも、ひどい話である。


 だがこの婚約破棄宣言は、ある意味において助かった。

 スヴェルツがそうしてくれたことによって、わざわざこちらから働きかける必要もなくなった。


「アルティアさん、あれは……」

「あっ……」


 私が今後のことも含めて、色々と考えていると、スヴェルツの後ろにある馬車から、一人の少女が出てきていた。

 それはクーレリアだ。どうやら彼女は、スヴェルツに同行して来ていたらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ