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余命半年の私に財産なんて必要ないと継母と妹に父の遺産をとられましたが、それは普通に窃盗です。  作者: 木山楽斗


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6.王への謁見

 驚くべきことに、私とセオドアは国王様に謁見することができていた。

 偶然にも、暇だったそうだ。それは本当に、幸運なことだったといえる。


「アルティア、それからセオドアよ。君達の話は聞いている。色々と大変なそうだな?」

「はい、国王様……」

「アルティア、君の父のことは本当に残念であった。私としても悲しいものだ。彼は優秀な伯爵であったからな」


 国王様は、私に言葉をかけてくれた。その表情は暗い。本当にお父様の死を悼んでくれているのだろう。

 しかしお父様は、流石であった。まさか国王様からも、評価されているなんて。

 そんなお父様の唯一にして最大の欠点は、後妻を見極める目がなかったことだろう。本当に、愚かな再婚をしてしまったものだ。


「しかし、カルシアとクーレリアの二人が、悪逆を働いているとはな。それはなんとも、残念な話だ。君の父ならば、あの二人の心も洗われるものかと思っていたのだがな」

「……国王様? それはどういうことでしょうか?」


 お父様の失敗にため息をつきそうになっていた私は、国王様の言葉に少し驚いた。

 口振りからして、カルシアとクーレリアのことを知っているということだろうか。いや、あの二人も元々は貴族の家の出身だ。少しくらいは知っているのかもしれないが。


「君の父とカルシアの縁談に関しては、私も一枚嚙んでいてな。私の弟、ボルガー公爵を知っているかね?」

「知らない訳ではありませんが……」

「カルシアとクーレリアは、その弟が気にかけていた二人でな。カルシアはとある男爵家の出身であった。彼女はそれから、質の悪い男に嫁いでな。その男と離婚した後は、転々としていたのだ。それをある時、弟が拾ってな。それから、縁談をまとめたのだ」

「そうだったのですか……」


 カルシアが男爵家の出身であることは、私も父から聞いていたことだった。

 しかしそれ以外のことなどは、特に知らなかった。ホーヴァイン公爵などという大物が関わっていたなんて、思ってもいなかったことだ。


 だがそうなると、お父様が結婚した理由というものも見えてくる。公爵からもたらされた縁談であるというならば、それは断りにくいことだろう。

 もしかしたら、優しさや同情心などもあったのかもしれない。カルシアとクーレリアは、国王様の口振りからして、大変な環境に身を置いていたようだし。


「弟はカルシアとクーレリアが、前オーヴァン伯爵の元でならば、幸せになれると考えていたようだ。それについては、私も同じ思いであった。君の父は本当に、できた男だったからな。彼女達の心の傷を癒し、ことが良い方向に進むと思っていた」

「……二人は、特にクーレリアは父の死を嘲笑っていました」

「そうだったのか。それは、すまなかった。そもそも私は、君の負担について考えが及んでいなかったといえる」


 国王様は、私に対して謝罪の言葉を述べてきた。

 ただ私としては、国王様よりもボルガー公爵の方が気になった。彼が縁談をまとめたということに関して、考えるべきことは色々とあるといえる。


 カルシアの経歴を国王様はぼかしていた。しかし転々としていた、というのはつまり、男性の間を渡り歩いていたということでは、ないのだろうか。

 となるとボルガー公爵とも何かあったのではないか、と考えられる。お父様は、結果として押し付けられたのだろうか。


「まあ、父の縁談のことについては置いておいて、問題は現在の二人の振る舞いです。あの二人がいる限り、オーヴァン伯爵家は安泰とは言えません」

「無論、二人をオーヴァン伯爵家から追い出したいというのならば、私も協力するとしよう。責任の一端は、私にもあるといえる。しかし、少しの間時間は必要だ。権力を振りかざすことはできるが、それをすれば後が面倒なのだ。正式に手続きを踏んでおきたい」

「はい、もちろんそれで構いません」


 国王様の言葉に、私は頷いた。

 私としても、強引な形で二人を追い出したという形には、できればしたくない。オーヴァン伯爵家の名に、傷がつくからだ。むしろ正式な手続きを踏んでおく方が、あの二人の付け入る隙をなくすことができる。


「……一つ懸念があるとすれば、ボルガー公爵でしょうか」

「む……」


 そこで、今まで黙っていたセオドアが口を開いた。

 その内容に国王様は、眉を顰める。それは当然のことだろう。セオドアは国王様にとっては弟にあたるボルガー公爵を、明らかに含みを持って口にしたのだから。


「セオドア、それはどういうことだ?」

「ボルガー公爵は、カルシアとクーレリアを拾ったと国王様は仰いました。その二人がオーヴァン伯爵家から追い出されるということを、快く思わないのではありませんか?」

「それは……しかし、今回の件を聞けば、奴とて認めざるを得ないだろう」

「縁談をまとめたくらいですから、ボルガー公爵にとっては、顔に泥を塗る結果になります。それで仮に、オーヴァン伯爵家に制裁などはなされませんか?」

「……」


 セオドアからの指摘に、国王様の表情は強張っていた。

 その可能性を考えているのだろう。実際の所、あり得ない話ではない。


 仮にボルガー公爵が、カルシアの色香に惑わされているとしたら。

 そうでなくても、顔に泥を塗る結果を快く思わない可能性もある。その場合、オーヴァン伯爵家はどうなるものだろうか。


「その点については、私の方でなんとかするとしよう。弟に反対はさせん。もちろん、制裁など以ての外だ。アルティアの身の安全は保障するとしよう」

「そう言っていただけるのならば、僕としては安心です。申し訳ありませんでした、国王様。失礼なことを申し上げました」

「いや、君の懸念は当然のものだ。むしろ私のこそ、すまなかった。弟のこととなると、私はどうにも目が濁ってしまうらしい」


 国王様は、ゆっくりと首を横に振った。

 その表情からは、本当に反省の色が読み取れる。ボルガー公爵のことは、やはり可愛いということなのだろうか。実の弟に国王様は甘く、時に失敗があったのかもしれない。


 だがセオドアのお陰で、今回そうなることはなさそうだ。

 とりあえずこれで、一安心といった所だろうか。後は騎士団の調査が終わるのを待つだけだ。

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