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余命半年の私に財産なんて必要ないと継母と妹に父の遺産をとられましたが、それは普通に窃盗です。  作者: 木山楽斗


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2.検査の結果

 オーヴァン伯爵家は、短命の一族である。

 父の父であるお祖父様も、早くに亡くなっていた。その兄弟も若くして亡くなったと聞いている。

 私の場合は、実のお母様を病気で失っている。つまり、両親ともに若くして亡くなっているということだ。


「アルティナ様、診断の結果は、特に異常などは見当たりません」

「そうですか……それは、良かったです」


 病へのかかりやすさというものは、時に遺伝するものであるらしい。

 母が病で亡くなり、かつ自分も病に犯されてから、お父様は私にも同じことが起こるのではないか、と危惧していた。

 だから私は、病院で定期的に診てもらっている。王都にある大きな病院で、定期的に検査を受けているのだ。


「安心しました。これでやっと、オーヴァン侯爵家の一員としての活動を始められそうです」

「……アルティナ様、健康であるとはいえ、無理をされてはいけませんよ? 先代が亡くなってから、まだ時間も経っていない。葬儀などの疲れもあるでしょう」

「ええ、ですが、やらなければならないことは山ほどあるので」


 オーヴァン伯爵の地位は、便宜上私が継ぐことになった。継げる男子がいなかったことで、そうなったのだ。

 ただそれは、一時的なものに過ぎない。私が結婚すれば、その婿が伯爵を継ぐことになる。その相手というものは、お父様が生前に見定めてくれている。


 しかし、私はオーヴァン伯爵の地位にある家に、やっておきたいことがいくつかあった。

 それは主に、カルシアとクーレリアの排除だ。彼女達がこれ以上余計なことをしない内に、オーヴァン伯爵家から追い出しておきたい。


「……先代も同じことを仰っていました。忘れもしていません。あれは余命が半年であることを告げた時のことです。あなたのことを気にかけていらっしゃっていました」

「余命半年、ですか。まあ、考えることは同じなのかもしれませんね。期限があるというならば、その内に色々とやっておきたくなるものなのでしょう」

「私のような立場からすれば、無理をしてもらいたくはありません」

「もちろん、父とてわかっていたはずです。しかし、性分だったのでしょう。命が尽き果てる前に成すべきことをしたいと、そう思ったのかもしれません」


 余命を告げられた時の父の心境というものがどのようなものだったのか、それを私は正しく想像できる訳ではない。

 だが父がどのような人であるかは、よく知っている。最後までその責務を果たそうとしていたことは、間違いない。

 その父の意思を、私は受け継がなければならない、ということだろう。


「先生、今日はありがとうございました。私はオーヴァン伯爵家の屋敷に戻ります」

「アルティア様、どうかお気をつけてください」

「ええ……」


 私はお礼を述べてから、診察室を出た。

 健康状態に関しては、とりあえず安心だ。まあ、これから先の未来、何かあるのかもしれないが、それは今考えても仕方ないことである。


「……」

「……あら?」


 そんな風に思っていると、見知った顔を見つけた。

 診察室の前の待合に、一人の男性がいる。それも私にとっては、馴染み深い人がだ。


「スヴェルツ? あなたがどうしてここに?」

「……アルティア? ああいや、君のことが心配でね? 少し様子を見に来たのさ。セオドアも一緒さ」


 そこにいたのは、ゾーント伯爵家の次男であるスヴェルツであった。

 彼は、私の婚約者である。そのスヴェルツがここにいるとは、驚きだ。

 さらに言えば、彼の双子の弟であるセオドアもこちらに来ているらしい。その姿は見当たらないが、どうかしたのだろうか。


「それはお礼を言わなければならないわね。ありがとう、心配してくれて嬉しいわ」

「いや、当然のことさ。俺と君は、婚約しているのだからな。しかし、お父上のことは本当に残念だったな。葬儀が終わって一区切りとはいえ、まだ整理もついてはいないだろう。俺の父上も、嘆いているよ」

「それは、そうでしょうね。二人は親友といっても良い関係だったのだから」


 ゾーント伯爵は、お父様と親交が深い方だった。

 そういった縁もあって、スヴェルツとは幼少期の頃から付き合いだ。彼のことは信頼している。紳士的であるし、きっと良き伯爵になってくれることだろう。


「父上は君のことも心配していたよ」

「ゾーント伯爵には、葬儀の際にも色々と気遣っていただいて、本当に感謝していりわ」

「そのことは、父上にとっては当然のことだったのだろう。気にする必要はない。これからも何かあれば、頼ってくれていいとも。俺も含めて、ゾーント伯爵家は君の味方だ」

「ありがとう、スヴェルツ」


 スヴェルツ及びゾーント伯爵家の存在は、私にとって心強いものだった。

 とはいえ、あまり彼らに頼っていてはいけない。オーヴァン伯爵家の問題は、私の方で片づけておかなければ。


 できれば、正式に結婚するまでに、解決しておきたいものである。

 ただ、それはそこまで難しいことという訳でもないだろう。今の私には、オーヴァン侯爵としての力もある訳だし。


「さて、俺はそろそろ戻るとしようか。君はもう少し、時間などがかかるのかな?」

「え? ああ、そうね。支払いなどがあるから、もう少し時間はかかるかしら?」

「そうか。気を付けて帰ることだな。近頃は、厄介な手合いも多いと聞く。まあ、護衛もついているし問題はないか」

「そうね。スヴェルツも気を付けて」

「ああ、もちろんだとも」


 スヴェルツは、そう言って私の前から去っていった。

 ただ私は、そんな彼の様子に少し違和感のようなものを覚えていた。

 スヴェルツは、何か焦っている様子だったのだ。何かこの後、急用でもあるのだろうか。少し怪しいような気もする。


 いや、もしもそうであるならば、その隙間に会いに来てくれたことに感謝するべきだろう。

 なんというか、私も気が張っているのかもしれない。別にスヴェルツが怪しいなんてことはない。彼だって忙しい身であることは、間違いないのだし。


 とりあえず私は、病院側の会計を待つとしよう。

 それ程時間がかかるものではないだろうが、しばしの休息だ。これからは忙しくなることだし、できる限り休んでおくとしよう。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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