↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『普通の恋が、したかった。』  作者: vastum


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
87/93

第87話 文化祭の準備

九月後半。


放課後。


教室はかなり騒がしかった。


「何やる?」


「飲食は?」


「お化け屋敷したい!」


文化祭準備。


その言葉だけで、教室の空気が一気に浮ついている。


朝比奈湊は窓際の席から、その騒がしい空気をぼんやり眺めていた。


夕方の光。


秋っぽくなってきた風。


でも。


教室の熱気だけは夏みたいだった。


「朝比奈ー!」


藤堂が手を振る。


「何」


「お前もちゃんと参加しろ」


「してる」


「顔が他人事」


かなり失礼だった。


でも。


半分くらい当たっている。


「みなと」


隣じゃない席から、栞がこちらを見る。


「何やりたい?」


その質問に、湊は少し考える。


文化祭。


去年までは、“面倒”くらいしか思ってなかった。


でも今年は。


少し違う。


「……なんでも」


そう返すと、栞は少し笑った。


「みなとっぽい」


「何そのイメージ」


「静かに手伝ってくれそう」


かなり読まれている。


結局。


クラスは喫茶店に決まった。


「王道!」


「楽そう!」


「衣装どうする?」


教室が一気に盛り上がる。


その中で。


「メイド?」


「執事?」


誰かが言った瞬間。


藤堂がこちらを見た。


かなり嫌な予感。


「朝比奈、執事似合いそう」


「やらない」


即答。


「えー」


周りも少し笑う。


すると。


栞が小さく呟いた。


「……ちょっと見たいかも」


その瞬間。


湊は少し止まる。


「……マジ?」


栞は少しだけ照れながら笑った。


「似合いそう」


その顔が、かなりずるい。


「じゃあ決定!」


藤堂が騒ぐ。


「却下」


でも。


教室はかなり盛り上がっていた。


文化祭。


準備。


その空気だけで、少し楽しい。


放課後。


今日は、そのまま居残りで話し合いになった。


机を動かす。


模造紙。


役割決め。


教室の空気が、完全に“文化祭前”だった。


「みなと」


「ん?」


栞が隣へ来る。


近い。


かなり自然に隣へ座る。


「買い出し係、一緒だった」


紙を見せてくる。


本当だ。


「……狙った?」


湊が小さく言う。


すると。


栞は少し笑った。


「ちょっとだけ」


その返事が、かなり可愛かった。


夕方。


教室にはオレンジ色の光が入っている。


文化祭の話をしてるだけなのに、妙に青春っぽい。


「なんかさ」


栞が小さく言う。


「ん?」


「去年より、文化祭楽しみ」


その声が、かなり柔らかい。


湊は少しだけ窓の外を見る。


去年。


文化祭なんて、ただのイベントだった。


でも今年は違う。


準備も。


放課後も。


全部、楽しみになっている。


「……分かる」


自然にそう返していた。


「みなと」


「ん?」


栞が少しだけこちらを見る。


かなり優しい目だった。


「前回の文化祭の時、こんな感じになると思ってた?」


その質問に、湊は少し笑う。


「全然」


即答だった。


文化祭の日。


一緒に回って。


少しずつ距離が縮まって。


そこから、全部始まった。


「私も」


栞も少し笑った。


その顔を見るだけで、胸の奥が温かくなる。


話し合いが終わる。


外は、もう少し暗くなり始めていた。


「帰ろ」


栞が言う。


「うん」


昇降口。


秋の夜風。


夏より少し冷たい空気。


「文化祭、楽しみだね」


栞が小さく言う。


「かなり」


またその言葉。


でも。


今日は本当に、それしか出てこなかった。


駅までの道。


街灯。


秋っぽい夜。


その景色が、妙に綺麗だった。


「ねえ」


栞が小さく言う。


「ん?」


「執事、ほんと見たい」


かなり楽しそうな顔。


「まだ言うのか」


「絶対似合う」


「嫌な予感しかしない」


すると。


栞が少しだけこちらへ近づく。


肩が軽く触れる。


「でも、みなとならかっこいいと思う」


その瞬間。


胸の奥が、一気に熱くなる。


「……急だな」


やっとそれだけ返す。


栞は少し照れながら笑った。


「思ったから」


風が吹く。


秋の匂い。


好きな人の声。


その全部が、かなり心地よかった。


駅が見えてくる。


電車の光。


夜のホーム。


「みなと」


「ん?」


栞が少しだけ笑う。


「文化祭、多分また特別になるね」


その言葉が、静かに胸へ残る。


湊は少しだけ空を見る。


去年とは違う文化祭。


でも。


今年は、もっと楽しみだった。


「……かなり」


そう返すと、栞は嬉しそうに笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。