↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『普通の恋が、したかった。』  作者: vastum


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
73/93

第73話 水着

海へ行く前日。


七月。


朝から、かなり暑かった。


空は真っ青。


雲も夏っぽい。


セミの声までうるさい。


完全に“海日和”って感じだった。


朝比奈湊は、自室でスマホを見ながら小さく息を吐く。


明日。


栞と海へ行く。


その事実だけで、昨日からずっと落ち着かない。


しかも。


海。


つまり。


水着。


そこまで考えた瞬間、湊はスマホを顔へ押しつけた。


「……無理だろ」


独り言が漏れる。


そのタイミングで、スマホが震えた。


『明日、ちゃんと起きてね』


栞から。


湊は少し笑う。


『起きる』


すぐ既読。


『ほんと?』


『子供扱いすんな』


数秒後。


『でも、ちょっと楽しみ』


その一言だけで、胸の奥が静かに熱くなる。


『俺も』


そう返した瞬間。


また通知。


『みなと』


『ん?』


少し間。


それから。


『水着、変じゃないといいな』


そのメッセージを見た瞬間、心臓が本気で跳ねた。


無理だ。


朝から刺激が強すぎる。


『絶対大丈夫』


なんとか返す。


すると。


『まだ見てないのに?』


完全に遊ばれている。


『栞だし』


反射だった。


送ったあとで、少し固まる。


でも。


既読はすぐついた。


『……そういうの、ずるい』


その返事を見て、湊は思わず笑ってしまった。


昼。


結局、午後から少しだけ会うことになった。


理由は、“海の準備”。


でも、多分ただ会いたかっただけだ。


駅前。


夏の日差し。


かなり暑い。


「みなと」


声。


振り向く。


栞。


今日は白いキャップを被っていた。


夏っぽい。


そして、かなり可愛い。


「……おはよう」


「もう昼」


栞が笑う。


その笑顔を見るだけで、少し緊張がほどける。


ショッピングモール。


浮き輪。


サンダル。


日焼け止め。


海コーナーがかなり夏だった。


「日焼け止め必要かな」


栞が言う。


「いるだろ」


「みなと、焼けそう」


「まあ」


「黒くなったら高校球児みたい」


「偏見だろ」


二人で少し笑う。


その空気が、かなり好きだった。


雑貨屋。


タオルを見る。


その時。


「みなと」


栞が小さく呼ぶ。


「ん?」


「ちょっと待ってて」


そう言って、栞は一人で別のコーナーへ行く。


数分後。


戻ってくる。


でも。


なんか少し落ち着かない感じだった。


「……?」


湊が首を傾げる。


すると。


栞が少し視線を逸らしながら言った。


「水着、買った」


その瞬間。


湊の心臓が、一気にうるさくなる。


「……あ、そう」


反応がかなり怪しかった。


栞は少し笑う。


「みなと、今絶対変な想像した」


「してない」


「嘘」


かなり図星だった。


「……仕方ないだろ」


認めた瞬間。


栞が吹き出した。


「正直」


「最近隠せない」


「知ってる」


かなり楽しそうだった。


夕方。


買い物を終えて、駅前のベンチへ座る。


飲み物。


少し涼しくなった風。


夏の夕方。


その空気がかなり心地いい。


「ねえ」


栞がジュースを飲みながら言う。


「ん?」


「海、ちょっと緊張する」


その言葉に、湊は少しだけ止まる。


「栞も?」


「するよ」


少し笑う。


「だって、みなと絶対反応するし」


その瞬間。


完全に言葉が止まる。


「……いや」


「するでしょ」


かなり確信を持った顔だった。


そして、多分その通りだった。


「みなと」


「ん?」


栞が少しだけこちらを見る。


夕方の光の中で、その目がかなり柔らかかった。


「でも、ちょっと見てほしいかも」


その瞬間。


心臓が、本気で危なかった。


「……それ反則」


思わずそう言う。


栞は少しだけ照れながら笑った。


でも。


耳はかなり赤かった。


「私も言ってて恥ずかしい」


その顔が、かなり愛しかった。


風が吹く。


セミの声。


夕焼け。


その全部が、妙に青春っぽかった。


「明日、晴れるかな」


栞が空を見る。


「多分」


「晴れてほしい」


その声が、少し楽しそうだった。


湊は少し笑う。


「かなり楽しみだな」


そう言うと、栞は少しだけ目を丸くした。


それから。


かなり嬉しそうに笑った。


「……私も」


少し沈黙。


でも。


その静けさが心地いい。


「みなと」


「ん?」


「明日、多分ずっとドキドキしてる」


その言葉に、湊は少しだけ空を見上げる。


夕方の空。


夏の匂い。


そして。


好きな人。


「……俺も」


本当に。


明日が、楽しみすぎた。


駅へ向かう道。


夕焼けが少しずつ薄くなる。


その景色を見ながら、湊は思う。


去年までの夏には、こんな未来想像してなかった。


好きな人と海へ行く。


そんな“青春みたいな予定”が、自分にできるなんて。


でも今は。


その全部が、ちゃんと現実だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。