第8話 本当にキャラソン収録が始まる
収録が終わった。
いえ、今日の場合は「収録は終わった」と言うべきなのかしら?
「お疲れ様でーす」
もちもちお肌の田中が元気よく挨拶している。
(ふぅ、終わった……)
台本を閉じながら、そっと息を吐く。
ブルーが今日も全体的に塩対応だったわね。
もっと可愛いセリフとか言ってみたい。
ラストで街を凍らせちゃったけど、ツッコミもなく放置よね、あれどうするのかしら?
「じゃあ行こうか」
キラキラ笑顔のグリーン役に、田中が捕まった。
「田中、声は大丈夫?」
「え? あ、はい~」
(行くんだ)
流されるままに連れていかれる田中。
近寄ろうとしていたレッド役の不良俳優が、少しだけ戸惑ったように立ち止まっている。
(あ、止めたいのね)
なんとなく分かる。
芸能界の問題児も、田中の前ではただの過保護な男だ。
「ついて行かないの?」
好奇心からつい声を掛けてしまった。
「次の仕事があんだよ」
ぶっきらぼうに、でもきちんと答えが返ってくる。
(あら、会話は成立するのね)
「私もよ。じゃあ、お疲れ」
このままついていけば、何か面白いことが起きる気もする。
でも。
(やめとこう)
なんとなく、嫌な予感がした。
私はそっと踵を返す。
(……たぶん、知らない方がいい気がする)
こんな所で油を売っている場合じゃない。
アイドル仲間たちと早く合流して、自分がアイドルということを思い出したかった。
田中はグリーンにドナドナされた!!
無事だったかは、次回で。




