第9話 その後の話を聞かされる
いつもより少しだけ早く現場に着いた。
(別に心配しているわけじゃない)
なんとなく、早く目が覚めただけ。
そういうことにしておく。
スタジオの前は、まだ人も少なくて静かだった。
(……来るかしら)
誰とは言わない。
言わないけど。
「おはようございます~」
(来た)
のんびりした声とともに入ってきたのは田中。
いつも通りの、ゆるい雰囲気。
――なんだけど。
(あれ?)
じっと見る。
(……ちょっと痩せてない?)
顔がほんの少しだけスッキリしている気がする。
気のせい?
「おはよう」
なるべく自然に声をかける。
「おはよう~」
いつも通りの返事。
気付いたら田中の頬を両側から掴んでいた。
もちもち、はしている。
でも、なんかこう。
(お肉、減ってない?)
前よりほんの少しだけすっきりしている気がする。
……それにしても、このもちもち感は癖になる。
「その、昨日どうだったの?」
「普通に歌っただけだよ~」
普通に歌ったら一日でこんなに減るわけがない。
「お疲れっす」
そこにレッド役が入ってきた。
「ねぇ、田中、絶対減ったわよね!?」
「あ?」
返答が普通に怖い。
(なんでそこで威圧するのよ)
「いや、だって見てよこれ!」
田中の頬をむにっと引っ張ろうとして、止めた。
レッド役の目が怖い。
「昨日より絶対減ってるって!」
「え~? そうかな~」
レッド役がちらっと田中を見る。
少しだけ目を細めて。
「……どれくらい歌った?」
「朝までだよ~」
想像以上にスパルタだった。
キラキラ王子、怖い。




