第7話 この歌、誰のため?
休憩時間。
スタジオの外に出ると、いつもの緩い空気に戻る。
(はぁ……落ち着く)
変人ばっかりの現場だけど、収録中は真剣だから空気が緊張するのよね。
落差になかなか慣れない。
ソファに座りながら、イエロー役――田中がのんびりと口を開いた。
隣には当然のようにレッド役が座り、ココアを田中に持たせている。
田中はバラエティで何度か一緒になっているから、気安く話せる相手。
のはずなんだけど……。
(レッド役のガードが固すぎて近寄れない)
あいつのせいで私、現場でほぼボッチなんですけど!?
「桜マンドラゴラ・ピンクのキャラソン、良かったね~」
(キャラソン?)
思わず顔を上げる。
何それ羨ましい。
「本当に収録したのか……」
「うん、綺麗な声だったよ」
どこかうんざりしたようなレッド役の言葉に、田中がにこにこと返している。
監督絡み、かな。
「一時期、監督が使い物にならなくなったって、スタッフが泣いてたな」
「今は復活して、脚本は自動書記並みの速さで書いてるらしいよ」
どうやら人生丸ごと捧げている推しの専用の歌に情緒が壊れてしまい、歌を延々とリピートしながら物凄い勢いで作品を仕上げているらしい。
(天才というより狂人よね)
「君たちもキャラソンが欲しいなら書いていいよ」
「俺は遠慮します」
「僕は歌ってみたいなぁ」
ちょうど部屋に入ってきたグリーン役が、にこりと微笑む。
レッド役は即答で断り、田中はふわっと乗っかった。
「いいね、じゃあ今日の収録が終わったら打ち合わせしようか。仕事は大丈夫かな?」
「今日はここの収録が終わったらオフです」
「うん、今スタジオを予約したから、終わったら行こうか」
怖い。
え、会話の流れおかしくない?
キャラソンが欲しいと言った田中。
了承したグリーン。
会話が終わる前にスタジオを予約って、なに?
■イエロー役:トロピカル田中
バナナ好き芸人。
現場でも普通に食べてる。




