第74話 参謀決定
DANCERUSHで高得点を取って以来、会えば勝負してたのよね。
その後、猫と三人でご飯を食べに行くこともあった。
つまり――友達枠に入れてもいいと思うの。
「え、この底抜けに明るそうな人がノクス?」
「成瀬さん、あれやって」
「あれ?」
「ほら、私がどうしてもステップのタイミングを掴めなかった時のあれ!」
「ああ……はいはい」
言ったら思い出してくれたらしい。
さぁお義父さん、私の友達の実力を見てちょうだい!
「――今のところは音が聞こえるより一呼吸早く足を前に出せ」
「ほら!」
「……ノクスだぁ」
音が聞こえるより一呼吸早くとか意味が分からないけど、頭がいい人って理解できない部分があるからそういうものよね。
あとあれは私が悪いんじゃなくて、音楽とステップ表示がズレているんだと思うの。
「えーっと?」
「失礼しました。私、マンドラゴラ戦隊アニメーション監督の秘書をしております、緒方悠斗と申します」
「成瀬景です。カメラマンアシスタントやってます。あと趣味でダンス動画を配信してます」
「配信者なんですか?」
「いやー、本業ってほどじゃないですよ。本業の方はそろそろクビになりそうですけど! あははは!」
知らなかった。
お兄さん、無職になりそうだった。
ならなおさらノクス役がちょうどいいわね!
「クビになりそうなの?」
「この間、機材ごと池に落ちちゃって! 機材は死守したんだけどね!」
うん、私でも分かる。
それは怒られるやつ。
「現在、こちらの作品では新キャラクターの声優を探しておりまして」
「声優?」
「はい。成瀬さんにはそのキャラクターを演じていただきたいと思います。監督、よろしいですね」
「……うん……」
お義父さんの視線が別の所を見てる。
頭の中で物語が展開している時のあれね。
「緒方君、彼に脚本渡して。あと正式な契約」
「承知しました」
こうしているとお兄ちゃんって普通に有能な秘書なのよね。
仕事から一歩離れるとストーカーと紙一重になるけど。
「本業の方の契約をお聞きしても?」
「あー……どうなってるかな? 今ちょっと謹慎期間というか、仕事を回してもらえてないんですよね」
「ではそのように」
何がだろう。




