第73話 参謀を探せ
お義母さんの爆弾発言の翌日。
現場に入ったらお義父さんが頭を抱え、お兄ちゃんが仁王立ちしていた。
「監督、参謀役は決めたのですか?」
「違うんだよ……候補はいるのに誰も違うんだ……」
「こだわりは監督の美点ですが、参謀の初登場が近いですよ」
「分かってるけどさぁぁ」
真面目に仕事のことで悩んでた。
「こちらの方はどうですか? ベテラン声優ですよ」
「声はいいんだけど、ノクスじゃない」
お兄ちゃんが見せたタブレット端末をちらりと見て、すぐに否定している。
お義父さん……一体どんな声を探しているんだろう?
「ノクスってどんな人なの?」
「冷静で頭が良くて、いつも先を読んでるキャラだよ。声は低いだけじゃダメ、冷たすぎても違う。落ち着いてるけど余裕があるわけじゃなくて、頭が良さそうなんだけど、ちょっと神経質そうな感じも欲しい。基本は感情を表に出さないけど、ガザンたちが作戦通りに動かないと段々苛立ってくる感じ。あと悪役だからって、いかにも悪そうな声にはしたくなくて――」
お義父さんが語り始めた。
長い。
そしてこだわりが強い。
「お兄ちゃんの知り合いにいないの?」
「監督の周囲にいる人間なら把握しているんですけどね」
それはそれで怖い。
「キャラデザインとキャラソンは決まってるのに!!」
むしろそこまで決まっていながら、なんで声優を決めてないんだろう。
天才ってこういう時に大変ね。
「砂漠バナナマンドラゴラ・イエローを田中に決めた理由は?」
「バナナ好きだから」
「砂漠の最強兵・ガザン」
「勢いと笑い声」
理由が酷い。
でも、そう考えると声優だから選んでいるわけじゃないのね。
田中はバナナ。
熊さんは勢いと笑い声。
じゃあ、ノクスっぽい人が現れれば一発解決よね。
「……お兄ちゃん、どのくらい期間ある?」
「あと収録数回分ですね」
こっそり聞いたらこっそり教えてくれた。
よし、会えるかどうかは分からないけど、あそこに通っていればそのうち会えるわよね。
そして数日後。
「ノクス役候補を連れてきたわ!」
「こんにちはー! 成瀬です、俺って何で連れてこられたんですかねー、あはははは!」
「何この人!?」
「こはるさん、どこから連れてきたんですか?」
「ゲームセンター! ダンスゲーム友達なの」
そう、私が連れてきたのは、初めて一緒に踊って高得点を出して以来、何度も遊ぶようになった、あのダンスのお兄さんだった。
こはる「あ、いたいたー!」
成瀬「こはるさん、こんにちは! 今日は何で勝負しますか?」
こはる「それはまた今度! 時間ある? ちょっと付き合って」
成瀬「いいですよ。壺とか売りつけられたらどうしようかなー! あははは!」
こはる「売らないわよ!」




