第67話 採点機は忖度しない
遊びに行きたい。
昨日は収録が終わってからレッスン、その後は熊さんの家でたこ焼き。
美味しかったけど、レッスンがハードすぎてただの栄養補給だった。
もっと純粋に楽しみたかったな。
今日は仕事が早く終わったから猫に連絡したけど、残念ながら予定があるらしかった。
他に遊べそうな友達……パッと思いつかないわね。
いっそ一人で遊ぼうかな。
それとも家に帰ってRio様を無限ループする?
「うーん」
悩みながらスマホを意味なく眺めていたら、ふと思いついた。
そういえば私、一人でカラオケって行ったことあったっけ。
ゲームセンターのダンスゲームで高得点を出せたんだから、カラオケでも高得点出せるんじゃない?
私ならいけちゃうんじゃない?
近くのカラオケはどこ!
混んでいる所は嫌よ、私は今すぐ歌いたい。
そして――
会員登録という試練を突破し、部屋に案内された。
なるほど、こうなっているのね。
まずはどれから歌おうかな。
一人メドレーとかやっちゃおうかなー。
せっかくだから採点も入れちゃおう。
自分の歌なんだから、高得点間違いなしよね。
「……」
94点というシビアな数字がたたき出された。
なんでよ!
私は本人よ!
次はもっと難しいやつでさらに上を目指してやるっ!!
気合を入れて選曲しようとしたところで、画面が切り替わった。
『秋に聴きたい名曲――』
金木犀の花が風に揺れて、見覚えのあるロゴが浮かび上がった。
「あっ!」
『PHANTOM BEAT NEW SONG――』
なるほど、自分の歌でダメならRio様でさらなる上を目指せってことね。
よし、この歌にしよう。
早速タブレット端末を操作して曲を入力する。
流れ始める曲。
歌おうとした瞬間、私は思い出した。
Rio様はラップ担当。
PHANTOM BEATにはボーカルがいる。
――歌ったことがなかった。
♪風が少し冷たくなった どこからだろう甘い香り
画面に文字だけが流れていく。
「……よし、ガイドボーカル入れよう」
練習大事。
そう、これは練習よ。
うんうん。
操作してもう一回最初から。
なるほど、最初は抑え気味の歌い出しなのね。
くっ、歌いにくい、普通に歌うと歌いにくい!
……そういえば今日は一人だった。
誰に遠慮する必要はなかったわね。
本気バージョンで歌っても、イメージとかキャラとか考えなくて良かったんだった。
んんっ!
行くわよ。
「♪金木犀の香り街を包んで 寒くなったね、君と笑う」
そして出た点数は60点。
よし、もう一回。
こはるが歌ったPHANTOM BEATの新曲はこちら
▽PHANTOM BEAT『Come Closer』
https://youtu.be/TqzPogFoChE




