第66話 『君に近づく季節』
今日の収録も無事終了。
「お疲れ様でしたー!」
ブルーは相変わらずセリフが少なくて、でもその割に活躍シーンは多いのよねあの子って。
「こはるちゃん、今日はホットプレートでたこ焼きやるんだけど、来る?」
「はい!」
何それ絶対楽しいやつ!
「お義父さん、またね」
「やめて!?」
お義父さんに手を振って、熊さんと一緒にスタジオを出た。
あっ、お小遣い貰い損ねちゃった。
……今日は遊びに行くわけじゃないからいっか。
夕食までは時間があるからと、いつものレッスンスタジオに寄っていくことになった。
「うぅ、たまにはレッスンさぼりたいです」
「理央から逃げる自信があるならいいよ~」
熊さんが優しくない。
夕食までゲームするとか、何なら材料を切る手伝いもできるんだけどなぁ。
そう思いながら扉を開けたら――
「~~♪」
ピアノの音が聞こえた。
静かな曲だった。
ゆっくりとした音がスタジオに響いている。
「へぇ珍しい」
「?」
熊さんは誰か分かったみたい。
中へ入ってみると、ピアノの前に黒い人が座っていた。
そのすぐ横にはキラキラ王子もいる。
「~~♪」
黒い人は私たちが入ってきたことに気付いているはずなのに、ピアノを弾く手を止めない。
キラキラ王子を見つめたまま、低い声で歌い続けている。
「♪今年もこの香りを待っていた」
「♪俺も待っていた」
どうしよう。
スタジオから出た方がいい?
なんか見ちゃいけないものを見ている気分になるんだけど!!
「熊さん、出ませんか?」
「何で?」
「何でって……」
二人のピンクな空気に耐えられないからです!!
熊さんは慣れているかもしれないけど!
私はまだ10代!
刺激が強すぎるんです!
玄「直が歌っているのはこれだよ」
こはる「ん? 『桐谷直、9月1日新曲リリース』」
玄「そう、昨日リリースしたばかりの歌」
こはる「ピアノを弾けるのと、歌手だったこと、どっちに驚いたらいいですか?」
お知らせ
桐谷直、9月1日新曲リリース
▽『君に近づく季節』
https://youtu.be/mmaVgBOKIeY




