第64話 今度こそ反省?
さすが二回目、今回はお説教が長い。
「つまり、緒方さんとは何もないのね?」
ない。ないけど、一応報告しておこうかな。
「この後、緒方さんと要と三人で焼肉に行きました」
「……」
マネージャーが「頭痛が痛い」みたいな表情で黙り込んじゃった。
「これ」
マネージャーがスマホを操作して、二枚の写真を並べた。
「どっちも朝倉さんが写ってないわ」
「ガチャしてましたからね」
「それだけじゃなくて、妙にあなたたちが親密そうに見える瞬間だけ撮られてるのよ」
言われて改めて写真を見る。
一枚目は、監督狂いに向かって笑っている私。
二枚目は、両手を組んで頬を染めている私。
前回は送ってもらい、助手席から顔を出す猫と会話していた私。
前回といい、今回といい、タイミングが神がかっているわよね。
でも私、自分の人生にコメディ要素は求めてないんだけど……。
「もう……貴女はそれでいいわ、しばらく気をつけて」
「はぁい」
やっと解放された。
はー、長かった!
応接室を出て、ぐーっと伸びをする。
さて。
せっかく事務所まで来たし、何か食べて帰ろうかな。
そう思ったところで、見覚えのある男が廊下を歩いてきた。
「あ」
「こはるさん、こんにちは」
「何でいるの?」
「社長と打ち合わせです」
「うちの?」
「はい」
何の打ち合わせかしら?
「こはる? ……ええと、こちらは?」
応接室から出てきたマネージャーが監督狂いに戸惑っている。
さっきまで見ていた写真の相手だけど気付いてない?
それもそうか、一見どこにでもいる好青年にしか見えないものね。
「初めまして」
監督狂いがすっと名刺を取り出した。
「マンドラゴラ戦隊アニメーション監督の秘書をしております、緒方悠斗と申します」
「ご丁寧にどうも」
マネージャーも名刺を取り出し――動きが止まった。
お辞儀した姿勢のまま固まってるけど、大丈夫?
「それでは、本日はこの辺で失礼します」
いまだ動かないマネージャーをスルーして、監督狂いが歩き出す。
私も一緒に帰ろうと思い、横に並んで歩き出す。
「こはるさん、この後のご予定は?」
「お腹空いたからご飯食べに行こうかなって思ってた。緒方さんはお仕事終わったんですか? 奢ってください」
「ははは、お兄ちゃんと呼んでくれるなら幾らでも奢りますよ」
「お兄ちゃん、私がっつり系が食べたい」
「ボリューム満点の定食屋に行きましょうね」
やった! 定食大好き!
~おまけ・緒方と社長の打ち合わせ~
「九条から伝言を預かっています」
「……はい」
「『こはるは今、色々なことを吸収している時期だから、仕事を詰め込みすぎないでね』とのことです」
緒方がにこりと笑う。
「『あの子はのびのび育てたいから』とも」
「……承知しました」
「本人がやりたい仕事は、もちろん好きにさせてあげてください」
「はい」
うちのアイドルなんだけどなぁ。
社長は思った。
思っただけだった。




