第60話 ご飯を食べに行こう
今日の収録も無事終了。
「お疲れ様でしたー!」
台本を閉じて大きく伸びをする。
良かった。一応セリフはあったわね。
「おつかれー」
聞き覚えのある声に振り返ると、猫がいた。
「……何でいるの?」
「遊びに来た!」
さすが猫ね、自由度が違うわ。
「こはる、ご飯食べに行こう」
「えっ、熊さんのご飯食べたい」
「玄のご飯はいつでも食べれるでしょ、クーポン貰ったんだ」
見せられたスマホの画面には、お好み焼き屋の割引券が表示されていた。
あっ、ここ、何かの話題で有名になったお店だ!
……何の話題かは忘れたけど。
そこに監督狂いが近寄ってきた。
「要さん」
「おがたーおつかれー」
「仕事を紹介していただき、ありがとうございます。おかげで夢が叶いました」
「僕もお小遣い貰えたからいいよー」
なるほど、猫経由だったのね。
連絡先も交換していたし、納得したわ。
「これからお好み焼き食べに行くんだけど、おがたも一緒に行く?」
「いいですね、ご一緒させていただきます」
うんうん、仲が良いわね。
この三人で食べに行ったら、またあの虚無感に襲われそう。
他に誰か誘おう。私のために。
田中は……あっ、神崎が背中を押してスタジオから出て行った。
逃げたわね。
監督は白藤さんの背を追いかけて行っちゃったし。
スタッフも撤収を始めている。
残るはキラキラ王子と黒い人、あと熊さん。
熊さん、熊さんしかいない!
「デザートも美味しそうなんだよね」
「お酒の種類も豊富なんですね」
「こはる、ここ、トッピングが面白そうだよ」
「期間限定の謎メニューってなに?」
丸ごとチーズとか、激辛、もちもちとか本当に色々あるらしい。
「ほら、スタジオを締めるみたいだよ」
「玄、お好み焼き屋行こう! 奢って」
猫がスマホの画面を突き出しながら主張している。
「九条はどうする?」
「うん、いいよ」
結局、総勢6人で行くことになった。
男5人、女の子は私一人。
なのに行き先はお好み焼き屋……色気が皆無なのよね。




