第48話 猫のお誘い
こはるが社長と話している頃、熊谷も芸能ニュースサイトの予告を見ていた。
「ごめん……僕が送ったから」
巨体を縮こめて申し訳なさそうに顔を覆う熊谷。
向かいのソファには九条が座っていた。
「玄のせいじゃないよ。盗撮したやつが悪いに決まっている」
こはるの事務所の社長からは土下座せんばかりの謝罪文が届いた。
このままでは、アイドル活動に支障が出るかもしれない。
「僕が育てている子に傷を付けようなんて、いい度胸だ」
「どうするの?」
「週刊誌の本文が出る前に噂を塗り替える」
スマホの画面を消し、玄の横でダラダラしている要に目を向ける。
「要、日向と遊んできていいよ」
「本当! やったね、食べに行きたいアイスがあるんだよねー」
起き上がり、早速スマホを操作し始める。
「こはる今日暇かな?」
「今日はレッスンが終わればフリーだよ」
「誘ってくる!」
出る前にちゃっかり九条からお小遣いをもらい、ルンルンで出掛けて行った。
「噂を肯定しちゃわないかな?」
「あの二人が遊ぶ姿を見て、恋愛関係を疑う人はいないよ」
噂の打ち消しは要に任せ、次の一手を考え始める九条だった。
今日はもう帰っていいらしい。
荷物を取りにレッスンスタジオへ戻ると――
「こはる! アイス食べにいこー!」
「はぁ!? 猫!?」
猫がいた。
野良猫ではない、熊さんのところの猫だ。
「新しい店が出来たの、一緒に行こう!」
他の子がポカーンとしている中、グイグイとスマホを片手に近付いてくる。
ちょっと警備!
関係者以外立ち入り禁止じゃないの!?
「どうやってここまで入ってきたのよ!」
「これ」
普通に通行パス持ってた。
しかもちょっとVIPっぽいやつ。
こいつ何者……ああ、キラキラ王子のとこの猫だったわね。
無駄に権力持ってそう。
「お小遣いも貰ってきたよ」
「付き合うわ」
「やったね!」
「ちょっと準備してくるから待ってなさい」
「分かった。ロビーで待ってるね~」
そう言ってきた時と同じようにフラッとレッスンスタジオから出て行った。
みんなが我に返る前に持ってきちゃおう。




