第47話 見えない熊さん
人気アイドル・日向こはる、深夜に男性宅から帰宅か!?
送迎した男性の正体とは?
「何ですか、これ?」
社長とマネージャーに呼び出され、見せられた芸能ニュースサイトの予告。
そこには車の横に立つ私と、車から顔を出す猫の写真。
……熊さん、周囲が暗いのもあって、あの巨体が闇と一体化してる。
写真だと猫しか見えないんだけど、なにこれ面白い。
「こはる。貴女はアイドルよ、この男は誰? こんな大事な時期にスキャンダルなんて……」
誰と言われても猫ね。
名前、何だっけ?
確か熊さんが何回か呼んでいたわね。
そうそう、確か――
「要です」
「どこで出会ったの? 正直に言いなさい、怒らないから」
「レッスン中に乱入してきて、そのまま流れで一緒に夕食を食べました。熊さんもいましたよ」
「レッスン、熊……熊谷さん?」
「はい」
黙って聞いていた社長が、急にガクガクし始めた。
「も、もしかして九条さんのお知り合い、だったりする?」
「はい。当たり前のようにスタジオに入ってきましたし、かなり自由に振る舞っていました」
社長が顔を覆って固まっちゃった。
「社長、誰が相手でも深夜に帰宅するのはやはり問題が……」
「20時前が深夜ですか?」
遊んだ相手が熊さんだから、そんな遅くまで拘束するわけがない。
「遅くなる前に送るね」といつもキチンと送ってくれる。
むしろ猫が「いいじゃん、もっと遊ぼうよー!」と煩かったわね。
置いて行こうとしたら、いつの間にか助手席に座っていたし。
「彼氏ができたら報告してと言ったでしょう、夜に男性と二人で会うなんて」
「二人じゃないですよ?」
指先でタブレットの画面を操作し、運転席を拡大する。
「ここに熊さんがいます」
「……見えないね」
社長の声がなんだか弱々しい。
そう、熊さんが見えないせいで、男性と夜に会っていた証拠写真みたいになってしまっている。
私だって女友達と遊びたい。
でもキラキラ王子の周囲、男しかいないのよ!




