第43話 収録のあとで
歴史クイズが終わったから、やっといつもの日常に戻れると思っていた。
仕事が終わったら家に帰って、Rio様の歌を聞いて……一人カラオケ大会。
儚い夢だったわね。
「じゃあ、今日もやろうか」
収録が終わったら当たり前のようにキラキラ王子に捕まった。
「はい……」
もう抵抗はしない。
逃げても無駄だと学習したもの。
それに消費カロリーが半端ないし、何よりアイドル活動のライブも近いから追い込みにはちょうどいいのよね。
「今日は発声からね」
「はい」
キラキラ王子と思うからイラつくのよ。
こいつは先生、そう指導の先生と思うのよ、こはる!
息を整えて、どんな無茶ぶりにも対応できるように心身を安定させる。
このスタジオにいる時はアイドルの日向こはるは忘れて、自分を別人だと思った方がやりやすい。
例えば、そう。
ファントムビートの一員になったつもりで歌う。
何度も聴いたRio様の歌を思い浮かべ、その熱量を声に乗せる。
「うん、いいね」
ふふん、私はやればできる子なのよ。
国民的アイドルを舐めてもらっちゃ困るわ!
「じゃあ一曲通してみようか」
「はい!」
その時、スタジオのドアが開く音がした。
「お疲れー!」
ギターケースを肩に担いだ青年が、軽い足取りでスタジオへ入ってきた。
……誰?




