第4話 収録現場、やっぱり変
収録にも少しずつ慣れてきた――はずなんだけど。
(アフレコ……やっぱり緊張する……!)
台本は何度も読み込んだ。
監督の癖も分かってきたから、ブルーもやりやすくなった。
(私は今日も可愛い、大丈夫やれる! ちゃんとやるのよ私……!)
台本をぎゅっと持ち直す。
周りを見ると、みんなすでに立ち位置についていた。
(こうして見ると普通にイケメン揃いなのよね。田中はイケメンというより癒し系ぽっちゃりだけど)
みんな仕事は真面目だし。
顔面偏差値は高いし。
アニメの完成度も高い。
でも仕事が終わると、唯一の女子、紅一点、人気アイドルである私の存在が薄くなる空気が解せない!
そろそろ飼ってる猫が家出しそうなのよね。
「――第3話Aパート、いきます」
スタッフさんの声。
直後、電子音。
空気がピンと張る。
「この街と自然の未来は、俺たちが守る!」
(このリーダー、人間より自然優先なのよね)
顔は怖いし、態度は悪いし、イエローばっかり構っている人だけど、普通に上手いのよね。
声の力強さがリーダーって感じ。
「うんうん、人間も守ろうね~」
イエローがやんわりとレッドの「人類スルー」発言をフォローする。
(今、人間がついで扱いされたわよね?)
「むしろ自然破壊をする人間は敵じゃない?」
マンドラゴラの可愛い絵柄で言っていいセリフじゃない気がする。
本当にこのアニメどうなってるの?
「ブルーはどう思う?」
「凍らせたい」
やんわり振ったピンクもピンクだけど、ブルーの返しが容赦なさすぎる。
(ねぇこれ本当にヒーローもの?)
「行くぞみんな!」
レッドが踏み込み――敵に突撃。
直後、効果音とともに、街の一部が派手に崩れた。
(守ってない!!)
「OKでーす」
響く終了音。
(通った!?)
確かに台本通り。
台本通りだけども。
(正義のヒーローが街破壊してるのよ?)
マイクから離れながら、そっと周りを見る。
誰も何も言わない。
普通に一仕事終えた顔をしている。
(え、これ正解なの?)
台本に付いて行けないの、私だけ?
「今日も白藤さんのピンクが素晴らしい……」
監督がうっとりと呟いている。
あれはもう通常運転、気にしたら負けと悟った。
「10分休憩入りまーす」
ふぅと体から力を抜く。
視界の隅でレッドがポケットからお菓子を取り出し、流れるような動作でイエローに渡している。
受け取ったイエローは、迷いなくその場で食べ始めた。
(餌付けが自然すぎる)
こんなに可愛いアイドルが目立てない現場。
……私を甘やかしてくれる新人、入らないかな?




