第3話 説明できない職場
その日の収録を終え、私は別の現場へ向かっていた。
アイドルとしての収録。
見慣れたスタッフ、見慣れた空気。
(落ち着く……)
思わず、ほっと息が漏れる。
「こはるー! お疲れー!」
控室に入るなり、仲間たちが集まってきた。
ああ、癒される。
このキャピキャピ感、女の子って感じ。
「ねぇねぇ、新しい現場どうだった?」
「ヒーローのやつでしょ?」
「レッド役の神崎さんとか怖かった?」
キラキラした目。
純粋な好奇心。
(ああ、うん……そこ気になるわよね、普通)
私は少しだけ視線を泳がせた。
「えっとね……」
――その瞬間。
脳裏にあの現場の光景がよみがえる。
ふわりと微笑むだけで空気を変えるピンク。
その後ろでハートを飛ばし続ける監督。
バナナについて語りながら、もぐもぐ食べ続けるイエロー。
それを見て口元を緩めるレッド。
そして。
当たり前のように腕を組んで並ぶ、グリーンと黒騎士。
(みんなが求めている答えと、ジャンルが違う)
私はそっと現実に戻った。
「……どうだった?」
期待に満ちた視線が、こちらを見ている。
私は、一瞬だけ迷って――にこりと笑った。
「うん」
目を逸らしながら、答える。
「たのしい、しょくば、です」
「……え?」
仲間の一人が、首を傾げた。
「なんか今、間あったよね?」
「気のせい気のせい!」
私は即座に否定した。
危ない、危ない。
本音が漏れるところだった。
――うん。
説明できるわけがない。




