第2話 扱いの差
昨日のことは、いったん忘れよう。
(昨日はたまたまよ! 今日はちゃんと私も目立つわ!)
私は気合いを入れて、扉を開けた。
「おはようございます!」
完璧な笑顔、完璧な声量。
アイドルとして磨いたこの笑顔、どうよ!
「おはようございますー」
「今日もよろしくお願いします」
(よし、いい感じ!)
スタッフさんの反応も上々。
今日は、いける!
「おはようございます」
ふわりと、桜の花びらが舞うように柔らかい声が入ってきた。
その一瞬で、空気が変わる。
(来た)
十代の私よりお肌が綺麗なピンク役の人!
でも負けない、こちとら十代、早寝早起き、お肌の手入れもばっちりよ!!
「白藤さん……」
フラフラとピンク役の人に吸い寄せられていく、背の高い男性。
仕事に熱中しすぎて、全体的にくたびれているおじさん。何を隠そう「マンドラゴラ戦隊」アニメの監督なのよね。
(……まぁ、相手が悪いわね)
私は軽く気持ちを切り替えた。
「これ、美味いから」
「ありがとう!」
レッド役の不良俳優が、イエロー役の芸人に何かを差し出している。
あれは――今日、新発売のコンビニスイーツ、三種のバナナを使ったふんわりケーキ!?
貰ったその場でもぐもぐ幸せそうに頬張るその姿は――完全にハムスター。
「おはよう」
キラキラした笑顔とともに現れたのは、グリーン役。
隣には敵である黒騎士役の男性、二人は当たり前のように腕を組んでいる。
(いや、なんで腕組んでるの?)
自然すぎて一瞬気付かなかった。
私は、ゆっくりと周囲を見渡した。
ピンクにハートマークを飛ばし続ける監督。
イエローを餌付けするレッド。
すでにカップルなグリーンと黒騎士。
誰も私を見ていない。
(私、今日めっちゃ可愛いんだけど? 完璧に仕上げてきたんだけど?)
笑顔が思わず引きつる。
この現場、国民的アイドルの可愛い女の子がいるのに、誰も見やしねぇぇ!!




