第36話 監督の基準
私たちが選ばれた理由を聞こうとした。
――したのだけど。
でも監督は白藤さんを見つけた瞬間、吸い寄せられるようにそちらへ向かってしまった。
これ以上、監督から話を聞くのは無理だろう。
収録も一区切りついていたので、私たちは控室へ移動した。
(熊さんがいるだけで部屋が狭く感じる)
でも動きは軽やかだからギャップが凄い。
「僕らの採用理由、聞きたかったなぁ」
「まともな理由ならいいが……」
レッドは分からないけど、田中が採用された理由は何となく察している。
だって田中のキャラの名前、「砂漠バナナマンドラゴラ・イエロー」なんだもの。
もはや運命レベルよね。
「俺、理由知ってるよ」
「え!?」
熊さんの一言に田中と同時に声を上げてしまった。
まさかの熊さんが事情通!?
「神崎君は監督が『彼は線の細いイケメンじゃない。正義の力で守る理想のヒーローだ』って推しに推して採用したって」
意外とまともな理由だった。
不良だから迫力があるからじゃなかったのね。
「……」
神崎は微妙な顔をしてたけど、悪い評価じゃないからいいと思う。
「僕は!?」
「バナナ好きで即決だったらしいよ」
「わぁ」
どうしよう、私の理由は聞きたくない気がしてきた。
ある意味博打に近くないかしら?
「逃げんなよ」
そわっとしたのを察知されたのだろう、レッドに先手を打たれた。
「こはるちゃんはねぇ、バラエティ番組を見て決めたらしいよ」
まだよ、こはる。
まだ逃げる理由とは限らないわ!
「番組の中で収録を見てイケメン俳優の真似をしたことあるでしょ?」
「え?」
「僕覚えてる。一緒に出てたね~」
「あれを見て監督が『あの瞬間の彼女にブルーを見た』って」
何となく思い出した。
確かあれは映画の宣伝を見てコメントを言う場面。
人気の若手俳優だけど演技が大根で、褒めるところを必死に探して『俺が守るから下がってろ』のセリフを苦し紛れに真似したんだ。
親の七光りと顔の良さだけで売れているのよね、アイツ。
……いけない、うっかり恨み節になっちゃった。
「こはるちゃん、今日の予定は?」
「特にないです」
帰ってRio様の曲を聞く予定ぐらい?
「美味しいオムレツのお店見つけたんだ。皆で行かない?」
「行きます!」
「わぁ楽しみだね!」
「おう」
その後、白藤さんとキラキラ王子たちも誘い、結局皆で行くことになった。
今日は熊さんがいるから、孤立しない!
大人数でも、もう寂しくないわ!




