第35話 本当にあった怖い話
「熊さん、お疲れ様です」
「こはるちゃんもお疲れ」
「声優できたんですね」
「できたね~」
本人が誰よりも他人事だった。
「いつの間に練習したんですか?」
「九条に指導されたんだ」
熊さんの笑顔が一瞬影って、疲れた表情が見えた。
なるほど、キラキラ王子が黒幕。
「熊谷さんも声優初なんですか?」
「そうだよー」
田中がキラキラした目で熊さんを見上げている。
そう言えばこの現場、素人声優ばっかりじゃない?
私はアイドルでしょ。
神崎は不良俳優。
田中は隙あらばバナナを語る芸人。
白藤さんはどこかのブランド専属モデルだったかしら?
熊さんはドラマー。
キラキラ王子は資産家。
黒い人は……この人が一番謎ね。
(この道のプロがいない?)
どんな基準で選んだのかしら?
「監督、どういう理由で僕らを選んだんですか?」
ちょうど通りかかった監督に田中が疑問をぶつけた。
やっぱり気になるわよね。
「まず白藤さんありきで、他のキャラに合いそうな人間を探した」
想像より酷い理由だった。
「白藤さん?」
「ピンク役は白藤さんじゃないとやらないと言ったら、意見が通ったんだ」
「通るんですか!?」
「ああ、九条君は即OKしてくれたよ」
「へぇ~」
田中はのんびり感心しているけれど、後ろで引きつった顔をしているレッドに気付いてあげてほしい。
そして私の顔も引きつっていると思う。
キラキラ王子の権力が強すぎて怖い!
田中はなんで笑っていられるのよ!




