第24話 追加レッスン
「行くよ」
短い台詞とともにブルーが敵に突っ込んでいく。
画面では盛大に氷の柱が立ち上がり、雑魚敵がぴぃぴぃ鳴きながら逃げていった。
(たまに弱いものいじめしている気分になるわ)
そのまま収録は進み、戦闘シーンを一通り録り終えた。
ブルーがクールすぎて、相変わらずセリフが少ない。
そろそろ長台詞だって言ってみたい。
「OKでーす」
収録終了の声が響く。
するとレッド役が、自然な動作でお菓子を田中へ差し出した。
今日はスプーン付きで。
(あれ限定スイーツ!?)
あいつ、女子である私より限定ものに詳しくなってない!?
田中は慣れた動きでそれを受け取り、にこにこと開封している。
食べていいかすら、もはや確認しなくなっている。
もうあれ、餌付けが完了しているわね。
そこへ帰り支度を終えたキラキラ王子が近づいて来た。
「じゃあ行こうか」
「はい?」
綺麗な笑顔に嫌な予感がした。
「追加レッスン」
「追加!?」
聞いてない。
聞いてないわよ、マネージャー!!
「安心して、今日は軽めだから」
欠片も安心できないわよ!
「わ、わたし、今日はちょっと用事が……」
「はい、これ」
逃げようとした私に、キラキラ王子がスマホの画面を見せてきた。
そこには事務所の社長から『どうぞこはるをお願いします』という、取引先相手みたいな低姿勢な文面が表示されていた。
え?
「話は通してあるから」
「通さないで?」
「マネージャーさんも応援してたよ?」
「裏切り者ぉ!!」
誰か。
誰か私を助けてーーー!
ちょっと、国民的アイドルが困ってるいるんだから、一人ぐらいこっち見なさいよね!
この現場、薄情過ぎる!




