第23話 変化
「――はい、そこまで!」
レッスン室に音楽が止まる。
私は軽く息を吐きながら汗を拭った。
あの地獄のレッスンの後だと、前はきつかったレッスンが楽勝に感じる。
プロよりキツいって、あいつどうなってるのよ。
私はアイドルよ?
少しくらい手加減してくれてもいいと思う。
「……日向さん」
「はい?」
インストラクターの先生が近付いてきた。
悪い指摘ではなさそうね。
眉間にしわが寄ってないもの。
「今日の動き、前よりキレがあったというか……」
先生が不思議そうに首を傾げる。
「なんて言うんだろ。型通りに踊ってたのが、前より自然になったわ」
「自然……?」
頭の中であの地獄みたいな特訓がちらついた。
『綺麗すぎる』
『もっと感情を乗せて』
『ちゃんとぶつけて』
何度も何度も言われた言葉が脳裏をよぎる。
(うぅ……思い出しただけで疲れる……)
先生は満足そうに頷くと、そのまま去っていった。
とりあえず怒られなくて良かった。
先生と入れ替わるように、レッスン室の端で見ていたメンバーたちが集まってきた。
「ねぇねぇ、何があったの?」
「特別レッスンしちゃった!?」
「愛とか恋とか生まれた?」
「生まれないわよ!」
あいつは旦那同伴だったし、スパルタ指導だったし。
私は生き残るのに精いっぱいだったわよ!
……でも。
『こはるちゃん』
――熊さんに会えたのは、感謝してもいいかもしれない。




