第18話 ご褒美制
重そうな防音扉が並び、空気まで少し違う気がする。
(本格的なんだけど!?)
待って。
このビルにこんな場所があったなんて知らない!
戸惑う私をよそに、ずんずん奥へ連れて行かれる。
(逃げたい)
そしてとうとう、スタジオに到着してしまった。
スタジオの扉を開けると、そこにいたのは――
「おはよう」
キラキラ王子。
そして。
「……」
黒騎士役の男性だった。
(なんで黒騎士役の人までいるの!?)
旦那同伴か!
旦那候補どころか恋人すらいない私に対するマウント!?
……と思ったけど、そもそもそんな配慮をする人じゃなかった。
「じゃあ俺、昼買ってきますね」
「任せた」
でっかい男性が穏やかにそう言って部屋を出ていく。
静かに閉まる扉。
この空間で唯一の癒しが消えた。
残されたのは――
キラキラ王子と黒騎士役。
そして私。
「まずは軽く合わせようか」
「……軽く」
レッド役の死んだ目が脳裏をよぎる。
その『軽く』で何人犠牲になったのかしら。
「ほらほら」
「え、ちょっ――」
グイグイと背中を押され、黒騎士役の隣に強制的に立たされる。
ブースの中央には大きなマイクが二本。
本格的なレコーディング用のやつだ。
(ガチじゃない!?)
キラキラ王子が慣れた手つきで機材を操作する。
次の瞬間、スタジオに流れ出したのは――
(PHANTOM BEAT!?)
ここ数日ですっかり耳に馴染んだイントロ。
何度もリピートした、大好きな曲。
あわあわしているうちに、隣から低いボーカルが流れてくる。
耳に残る、芯のある声。
「チケット、最前列、欲しいんでしょう?」
ガラス越しにキラキラ王子が楽しそうに笑っていた。
「……っ!!」
やってやる。
やってやるわよ!
トップアイドルの本気を見せてやる!




