第17話 上階へどうぞ
翌日。
(なんでこうなったのよ……)
私は重い足取りでスタジオへ向かっていた。
逃げたかった。
でも逃げられなかった。
マネージャーにスケジュールを確認しようと連絡を入れたら、『その件なら聞いてますから、頑張ってくださいね』という激励付きの返答が返ってきた。
私のスケジュールをどの時点で押さえたのか、あまり知りたくない。
重い気分のまま建物に入ると、エントランスに見慣れない男性が立っていた。
(でっか)
思わず足が止まる。
目の前にいたのは、田中より一回り……いや、二回りは大きい男性だった。
肩幅が広い。
腕も太い。
隣に立たれたら圧で潰されそうな体格なのに。
「白鳥こはるさん?」
「はい」
にこりと笑った顔は驚くほど穏やかだった。
「スタジオに案内しますね」
「……よろしくお願いします」
ぺこっと頭を下げながら後ろをついていく。
大股なのに歩く速度はゆっくりで、気遣われているのが分かった。
(いい人だ)
エレベーターに乗り込み、ぼんやりと見上げる。
近くで見ると、本当に大きい。
熊みたいな体格なのに、不思議と安心感がある。
変な男たちしか周囲にいないせいかしら?
エレベーターが止まる。
案内されたのは、いつもの収録スタジオとは別の通路だった。




