第12話 抵抗は無意味
「君の歌、作ったからね」
焼肉の席での一言に空気が止まった気がした。
神崎から発せられるオーラが怖い。
(ここにはか弱い女子がいるんだから、少しは怒気を抑えなさいよね!)
こちとら暴力が苦手で、ホラー映画が怖くて見れないか弱い女の子よ!
(そんなだから不良俳優って言われるのよ!)
網の上で肉がじゅうっと音を立てる。
あっ、いい焼き加減。
(今、絶対食べ頃よね)
空気無視して食べていいかしら?
いいわよね、高級お肉だし、焦がしたらもったいないわよね!
「聞いてみたい!」
神崎が拒絶するより先に声を上げたのは田中だった。
さすがイエロー、マンドラゴラ戦隊のムードメーカー!!
そのまま神崎を抑えていて、お肉は私が美味しく頂くから!
「だよね」
グリーンがにんまりと頷く。
傍から見れば爽やかイケメンの微笑み。でも事情を知っている状態で間近で見ると、魔王の笑みにしか見えない。
(さぁレッド選手、ここからどう逃げ切るのか――!)
「焼けたぞ」
ぼそっと呟いたのは黒騎士役の男性。
魔王に目を取られていたら、目を付けていた肉が網の上から消えていた。
(やられた)
黒騎士役の人がグリーン役のお皿に肉を置くと、流れるような動作でそれが消える。
食べ方はとても上品。
でも一口が大きい。
その向こう側では、監督とピンク役がお互いに焼いた肉を、お互いの皿に盛りつけている。
(なんで交換してるの)
……私、何を見せられているのかしら。
神崎が田中に視線を向ける。
「……そうか?」
「うんうん!」
一瞬の間を置いて聞き返す神崎に、田中が満面の笑みを浮かべる。
(え)
「絶対かっこいいよ~」
純度100%の期待の目。
にこにこと笑う田中がグリーン役の手下に見えてきた。
口を挟まずに見守っているのがなおさら怖い。
神崎が小さく息を吐いて、「仕方ねぇな」と笑った。
(不良なのにチョロすぎでしょ!)
叫びたいけど下手に主張したくない。
今の私にできるのは、気配を殺すことだけよ。




