第11話 次の標的はレッド
焼肉の煙がゆらゆらと立ち上る。
各々、好きな肉を焼きながら、ゆるい空気が流れていた。
現場の仲間たちでご飯を食べにくるのは分かる。
でもなぜ焼肉なの!?
しかも高級店!
(お肉が美味しくて箸が止まらない……明日、明日から頑張ればいいわよね)
さっきまでの収録の緊張感が嘘みたい。
田中は楽しそうに肉をひっくり返しているし、レッド役は「野菜も食べろ」と絶妙な焼き加減の野菜を田中の皿にのせている。
――監督は白藤さんを見ている。
(いつも通りね)
この、国民的アイドルを差し置いて、男どもだけでイチャイチャしているのも、いつも通りすぎる。
私も、彼氏欲しい。
甘やかされたい。
(せめてスタッフ! 仲間で固まってキャッキャウフフしてないで、私にちょっとでいいから気を遣いなさいよ! 私が可哀想と思わないの!!)
むしろ私があっちに行くべき?
(行っちゃおうかしら。何も声優仲間で固まっている必要ないわよね?)
だってカップルしかいないんだもの。
「そうだ」
ふと思い出したように、グリーン役が視線を上げた。
「君の歌、作ったからね」
グリーンがさらっと告げる。
視線の先は――レッド役の神崎迅。
俳優の道一本。
歌など歌ったことがあるわけがない。
「……は?」
田中に給仕していた手を止め、鋭い眼光がグリーン役に向けられる。
「頼んでねぇ」
「うん、知ってる」
知っていてなお作ったと宣言するのは、つまり。
(君の意見は聞いてない、ってやつね)
なんというか……捕食者と獲物?
■レッド役:神崎 迅
「不良俳優」と呼ばれるヤンキー役常連の問題児。
それでも監督は「彼こそ正義のヒーローに相応しい」と言い切った。




