第10話 解せないブルー
田中の演じる「砂漠バナナマンドラゴラ」のキャラソンが完成したので、収録後に皆で聞いてみた。
(普通に、いい曲だったわ)
なんていうか、自然と体が動き出しそうな感じの。
「聞いていると元気が出てくる曲でしたね」
スタッフが素直に感想を口にする。
今日は珍しく収録後に誰も仕事がなかったので、流れで皆で食事に行くことになったのだけど……本来なら、男性ばかりの中に可愛い女の子が一人、身の危険を感じるべきなんだろうけど、全く危機感が湧かないわね。
それもこれも、全部、見る目がない連中ばかりなせいね!
「白藤さんには遠く及ばないものの、イエローらしいいい曲だった」
監督が腕を組みながら頷いている。
隣に座っているピンク役の白藤さんが、困ったようにはにかんで笑っている。
監督の隣に座るのが自然すぎて、一瞬いるのに気付かなかった。
いつの間にあんなに距離が縮んだのかしら。
(ふわもこセーターを着ていると、上品な女性というより清楚なお姉さんに見えるのよね。あの人、本当に男なのかしら?)
「……やはり白藤さんのあの一音の余韻が――」
語り続ける監督。
もはやお約束なので、白藤さん以外誰も聞いていない。
「ねぇねぇ、僕、ちゃんと歌えていたかな?」
コソコソと田中が聞いてくる。
どうやらレッド役に聞いても、白藤さんに対する監督のように全肯定なので、いまいち信じられないらしい。
(気持ちは分かる)
でも私も誰かに全肯定されてみたい。
コロッといく自信しかない。
「大丈夫だったわよ。全体的に元気が出る感じだったし」
正直に答える。
ただ、あの曲を作ったのがあのキラキラ王子と信じられないだけで。
「本当? よかった~」
ほっとしたように笑う田中。
「だから大丈夫だっつったろ」
横から入る低い声。
田中専属イエスマンのレッド役だ。
そのやり取りを少し離れた所で、グリーン役が楽しそうに見ていた。
(嫌な予感しかしない)
突然の腹痛起こして、私だけ帰っちゃダメかしら?
スタッフ:複数人いるけど、モブなのでほぼ背景。
最近、監督の世話はピンク役に任せている。
ブルーの悲哀より現場が大事。




