第13話 しなびたヒーロー
控室に響く、賑やかな声。
「こはる~! この前の現場どうだったの~?」
「イケメン多いんでしょ?」
「レッド役の神崎さんってやっぱ怖い?」
(落ち着く……)
アイドル仲間たちに囲まれて、きゃっきゃと笑う。
この空気。
この距離感。
(これよ、これ)
普通って、素晴らしい。
寂しいことに時間がきてしまい、皆と別れて現場に向かう。
(そういえば、あれ、どうなったのかしら)
スタジオへ向かう道すがら、昨日のことを思い出す。
本当にレッド役は歌ったのか。
歌えないという言い訳は通じそうにないし……歌えるまで朝までフルコース?
(やりかねないのよね、あの王子)
普通ならスケジュール調整が難しそうだけど、事前にレッド役の予定を押さえるくらいはしてそうだ。
スタジオの扉を開けると、すでに何人かは揃っていた。
その中に――
(いた)
レッド役の神崎。
いつも通りの、ぶっきらぼうな空気。
(でも、なんか元気ない?)
「おはよう」
「……おう」
声を掛けると短い返事が返ってきたけど、声に覇気がない。
良く見ると、目が死んでいるような……気のせい、よね?
「昨日、どうだったの?」
一瞬。
本当に一瞬だけ、神崎の目が泳いだ。
「……普通だったぞ」
その割には様子がおかしい。
さらに話を聞こうとした、その時。
グリーン役のキラキラ王子がスタジオに入ってきた。
「おはよう」
「ひっ」
今、神崎がグリーン役を見て悲鳴を洩らさなかった?




