4 ミツキのプレゼント
シオリおねーちゃんに会う前、私は持っていた本も借りた本も全部読んじゃって、すごく退屈していた。そしたらイチローくんやフタバちゃんが「シオリおねーちゃんにお話してもらいなよ」て教えてくれた。
「こんにちは、ミツキさん」
初めて会った時、シオリおねーちゃんは私よりずっと年上なのに、私のことをレディ扱いしてくれた。それがなんだかとっても嬉しかった。イチローくんやフタバちゃんは少し前から仲良くしていたらしくて、それがちょっぴり悔しかった。
シオリおねーちゃんは綺麗な人だったけど、ずっと入院していたから色白でやせていた。それでも前よりはだいぶ回復したんだと教えてもらった。でも、あれよりもずっとひどかったって、それってすごく重い病気だったんじゃないかな、て心配になった。
だから、お話を聞きたいと言っていいのかな、て不安になった。だけどシオリおねーちゃんは「私のお話でよければ、いつでもしてあげるよ」と笑ってくれた。
シオリおねーちゃんは、イチローくんが聞いた「魔女」のお話をしてくれた。それが終わると、フタバちゃんが聞いた「パティシエ」のお話をしてくれた。
どっちも、すごく面白くてワクワクした。今まで読んだ本に負けないぐらい面白くて、続きが聞きたくて毎日シオリおねーちゃんのところに行くようになった。
「ねえ、他にはないの?」
どっちの話も終わった時、私はもっとお話が聞きたくてシオリおねーちゃんにおねだりした。シオリおねーちゃんはすごく困った顔をしていた。
「ごめんね、他にもあったはずなんだけど……よく覚えていないの」
私はすごくがっかりした。あんまりにも私ががっかりしたからか、シオリおねーちゃんは慌てちゃって、「ち、ちょっと待っててね、思い出すから。えーと、えーと……」て必死で頭をかいていた。
「ひとつ、思い出したよ」
それからシオリおねーちゃんは、お話を思い出すたびに私を呼んでくれた。それはシオリおねーちゃんが見た夢の話だった。なんでこんなに面白い夢をたくさん見られるのだろう、て不思議に思ったし、とてもうらやましかった。
シオリおねーちゃんは、お話を思い出すたびに、元気になっていくみたいだった。
あんなに好き嫌いがあったのに、ご飯を残さず食べるようになった。お話をする時には、笑ったり怒ったり、時には本当に泣いちゃったり、まるで声優さんみたいに上手にお話してくれた。
それに最近は、私たちを主人公にしたお話をしてくれるようになった。
イチローくんが魔法使いで、フタバちゃんがパティシエ。私はなんと勇者。ちょっと照れくさかったけど、すごく嬉しかった。
三人で色々な世界に行って、たくさんの冒険をした。「次はどこを冒険したい?」と言われて、みんなでアイデアを出し合った。
「おねーちゃん、作家さんになればいいのに」
私がそう言ったら、シオリおねーちゃんはびっくりしていた。「さすがに、無理じゃないかなあ」なんて笑っていたけれど、私は無理じゃない、て思った。
シオリおねーちゃんが本を書いたら、私は絶対買う。
そしたら、おねーちゃんのお話を何度も何度も読めるもの。
「あ、そうだ」
私はシオリおねーちゃんにあげるプレゼントを思いついた。
私が、お話を書いてプレゼントするのだ。主人公はシオリおねーちゃん。職業は……うん、花嫁さんだ。
「大好きな人に会いに行くおねーちゃんを、私たちが助けてあげるお話にしよう!」
もうじきお別れだけど、最後にお話の中で一緒に冒険しよう。
そうしたら、シオリおねーちゃんは私たちのことをいつまでも覚えていてくれるはずだから。
「よーし、がんばって、書くぞー」
私は鉛筆を削ると、新しいノートを開いて、四人の大冒険を書き始めた。




