3 フタバのプレゼント
シオリおねーちゃんに会えなくなっちゃうのが嫌で泣いていたら、お母さんが「泣いちゃダメよ」て頭をなでてくれた。
「シオリさんは元気になったのよ。お祝いしてあげないと」
お母さんもイチローくんと同じことを言うから、私は泣くのを我慢することにした。
「タイインのプレゼント、何がいいかなあ?」
お母さんに聞いてみたら、「フタバの気持ちがこもったものにするといいよ」と教えてくれた。
プレゼントをあげるのはどんな人で、何が好きで、何が嫌いか。そういうことを考えて、一番いいと思うものをあげるのが、プレゼントのゴクイ。
そう言われて、私はシオリおねーちゃんのことを一生懸命考えた。
シオリおねーちゃんは、大人なのに嫌いなものがいっぱいあった。
ニンジンとか、ピーマンとか、グリンピースとか、シオリおねーちゃんはキライだった。看護師さんに「元気になれませんよ?」と怒られて、「なれなくていいもん」てほっぺたを膨らませて、また怒られていた。
「おねーちゃん、スキキライするから、カゼひくんだよ?」
私がお母さんに言われたことを教えてあげると、シオリおねーちゃんは変な顔をした。そのお顔が面白くて、私は看護師さんと一緒にクスクス笑った。
「ふ、フタバちゃんだって、キライなものあるでしょ!」
「シオリさん、四歳の子と張り合わんでください」
看護師さんにそう言われて、シオリおねーちゃんはまた変な顔になって、私はまた笑った。
私もスキキライはいっぱいあったけど、シオリおねーちゃんと一緒に食べるようになってからは、がまんして食べるようにした。
だってそうしないと、シオリおねーちゃんが「フタバちゃんも食べてないから、私も食べない」て言うから。私のせいにするのはずるいよね、大人なのに。
「フタバちゃんは偉いなあ。それに比べシオリさんは……」
「あーもー、食べる、食べるってば!」
私ががんばって食べたら、シオリおねーちゃんもがんばって食べるようになった。ごはんの量も、最初は私と同じぐらいだったけど、今は大人と同じ量になった。
ああそうか、だからシオリおねーちゃんは元気になって、タイインするんだな、てわかった。
「おねーちゃんの好きなもの、なんだったかな?」
キライなものは面白いお顔と一緒に覚えていたけれど、好きなものはなんだったかな、てちょっとだけ考えた。
「パンケーキ」
思い出した。
その日、とっても痛い検査があって、シオリおねーちゃんは泣きそうな顔でお昼ご飯を食べていた。かわいそうになったから、私はプリンをプレゼントしてあげた。だけどシオリおねーちゃんは、プリンのショッカンがダメ、て食べなかった。
ほんとに、スキキライいっぱいの、困ったおねーちゃんだ。
だからおねーちゃんは何が好きなのかな、て思って聞いたら、パンケーキだ、て教えてくれた。
「お友達がね、作ってくれたの」
「おともだち?」
それからシオリおねーちゃんは、パンケーキが得意なお友達、「パティシエ」のお話をしてくれた。
それは、イチローくんと一緒に聞いた、魔女のお話の続きだった。
楽しくて、ワクワクして、ほんとにすてきなお話で、私もパンケーキが大好きになった。
「あ、そうだ」
いいことを思いついた。
シオリおねーちゃんのタイインのお祝い。お母さんにパンケーキを作ってもらって、みんなでお祝いのパーティーをしよう。
そうしたらきっと、シオリおねーちゃんは私のことを忘れないでいてくれるはずだから。
明日起きたらお母さんにお願いしよう。私はそう考えながら、ベッドの中で目を閉じた。




