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防衛戦隊ディフェンジャー  作者: きり
第1章 普通の(?)の女子高生
24/26

22 身体検査

 途中、昨日と同様に誰とも擦れ違う事なくシロさんに案内された部屋は、昨日、私がお兄ちゃんに連れられて最初に入った部屋でも、ましてや鏡異界にある豪華絢爛な応接室でも無かった。

 そう言えば、昨日、お兄ちゃんが故意に踏み潰してしまったテーブルは、あれからどうなったのだろう等と、考えていた時だった。

「どうぞ、お入り下さい」

 そう言われ入った部屋は、コンクリートの打ち付けただけの、かなりシンプルな部屋だった。

 部屋の隅にポツンと置かれたロッカーと鉄製のテーブルに二脚の椅子が、微妙に哀愁を漂わせていた。テーブルの上には、何故かクリーニングしたての様な、ビニールに入った服が置かれている。

「今日、ここに来て頂いたのは、貴女のデータを採取させて頂く為です」

 そう言って、テーブルから件の服の入った包みを取り上げた。

「先ずはこれに着替えて下さい。着替えた服は、ロッカーに入れて下さって結構です。では、私達は外でお待ちしています」

 質問をしようにも、シロさんは一方的にそう告げると、私の腕からロッカを取り上げた。

「着替え終わったら、お知らせ下さい」

 そう言い残すとさっさと二人は出て行った。

 言われるままに着替えを済ませた私が連れて行かれた部屋は、壁一面、真っ黒な小部屋だった。

 中には何なのか私には正体不明な機械が所狭しと並んでいた。

「この位置で、これから私の言う通りに動いてみて下さい」

 機械に囲まれた、エアポケットの様な空間に私を導くと、シロさんはロッカを肩に乗せたまま、さっさと部屋を出て行ってしまった。

「では、先ずは足を肩幅に開いて両手を横に上げて下さい」

 直ぐにシロさんの声が聞こえて来た。

 何処かにカメラとスピーカーがあるのだろうか。 私は言われるままに動いた。

「はい、結構です。お疲れ様でした」

 言われた通りに色々な動作を繰り返した後、シロさんがやっと私を開放してくれた。

 声がした後、直ぐにシロさんが中に入って来ると、私を最初に通した更衣室へと連れて行ってくれた。

 服を着替えた私を行きと同じ手順で家に送り届けてくれたシロさんは、帰り際、暫くの間、私にディフェンジャーの皆に直接……というか、素――変身前の姿――で会わない事を一方的に約束させ、理由も言わずに帰って行った。

「つ、疲れたぁ……」

 シロさんが帰った――というか、一瞬にしてその姿を消した後、私は玄関先にぐったりと倒れ込んだ。

 邪衆魔と戦う事に比べれば、全くたいした事はしていないにも関わらず、妙な緊張感から来る疲労感は、ある意味それ以上のものだった。

「何か男の子の声がしなかった?」

 リビングからお母さんの声が聞こえて来た。

 それに答えている様なお兄ちゃんの声が聞こえて来たけれど、私には何を言っているのか、よく聞き取れなかった。

「あら、あなた何時帰って来たの?」

 声の主を確かめ様として来たのだろう。

 気が付くと、私の直ぐ目の前には、素足に白いパンツを穿いたお母さんの足があった。

「ただいま」

 やっとの思いで両手を突いて上体を起こした。そしてそのまま今度は座り込んでしまった。

「何だらし無い事やってるの。ほら、靴を脱ぐ」

 お母さんに背中を内臓が出そうなくらいバシンと叩かれた。

 こうしてこのままダラダラとここに座り込んでいたら、愛と名の付く鉄拳が飛んで来そうだ。

 私は身体を無理矢理動かすと、靴を脱ぎ立ち上がった。

「さ、手を洗ってうがいをしてらっしゃい。ご飯にするわよ」

 珍しく家族が揃う夕飯に、知らず私は顔が綻んだ。まあ、お父さんがいないのは何時もの事だったけど。

 私は先程の疲れが嘘の様に軽い足取りで洗面所に向かった。

 うがいと手洗いを済ませ、台所に入って行くと、リビングでお母さんが洗濯物を畳んでくれているところだった。

 あれから誰かが乾燥だか干すだかしてくれた様だった。

 お母さんに手伝うと申し出ると、お兄ちゃんを手伝う様に言われた。

 見るとお兄ちゃんは大量の炒飯を炒めているところだった。

 お兄ちゃんが炒飯を炒めてくれている間に、出来上がっていたサラダと餃子、スープを皿につぎ分けると、テーブルに運んだ。

 と、そこで重大な事実に事実に気が付いた。

「ロッカを忘れた!!」

 疲れで半分頭が働いていなかった私は、帰る時、シロさんがロッカを連れていない事に気付いていなかったのだ。

「どうしよう」

 今頃、ロッカは忘れられた事に腹を立てているに違いないと、一人オロオロしていると、お兄ちゃんが変身ブレスで呼び出せばいいと言った。

 成る程、その手があったか、と膝を叩かんばかりに納得していると、今度は別の忘れ物に気が付いた。

「お兄ちゃん、私、変身ブレスを忘れて来ちゃったみたい」

「何ぃーっ!?」

 これには流石にお兄ちゃんも驚きの声を上げた。

「いったい何処に忘れたんだ!?」

 お兄ちゃんは急かす様に尋ねてきた。

「秘密基地。今日、シロさんが私とロッカを迎えに来たんだ。何でも、私のデータを取りたいとかって。で、向こうで服を着替えて、更衣室のロッカーの中に置いたところまでは覚えているんだけど、そこからの記憶がとんと……」

「無いと?」

 お兄ちゃんは呆れた様に首を振ると、携帯電話を取り出した。

「何してるの?」

 私が尋ねると、指を一本立てて、シッと黙る様態度で示した。

「あ、お仕事中失礼します。黄笛の者ですが、シロさんをお願いしたいのですが。……はい。すみません。お願いします」

 携帯電話から漏れ聞こえる何度目かの呼び出し音に、やっと誰かが出たらしくお兄ちゃんが誰かと電話で話す。

 って言うか、お兄ちゃんが言った“黄笛の者”という表現に、何だか変な感じがした。

 そう言えば、あそこで働いている人達って、封神笛を代々受け継いで来た家に関係する人達だって言ってたよね。

 そんな事を考え耳を傾けていると、シロさんに電話が繋がったらしい。

「あ、シロさん、今日は妹の相手をしてくれた様で悪かったな。……いや、そんな事無いよ」

 何がそんな事無いのか聞いてみたかったけれど、今はそれどころではなかった。

 そんな些細な事よりも、お兄ちゃんの口調に驚いていた。

 昨晩、お兄ちゃんは、シロさんに対して、聞いた事が無いくらい慇懃無礼に振る舞っていた。

 それが今はどうだろう。まるで旧知の友とでも言わんばかりなフレンドリーさではないか。

 私はポカンと口が開いているのを意識したが、開いた口を戻す気力がわかなかった。

「あ、ところでロッカは今そっちに?」

 お兄ちゃんの言葉に、私の顎はやっと力を回復した。

 自分でも自然と眉間に皺が寄るのが分かる。

 少しでも早くロッカの様子が知りたくて背伸びしてお兄ちゃんの持つ携帯電話に耳を近付けると、シロさんがこっちいますよ、と答える声が微かに聞こえた。

 ヨシッ!!

 声に出さずにガッツポーズを決めていた私を煩わしく思ったのか、お兄ちゃんは私にシッシッとばかりに手で払う仕種をすると、今度は私に背を向けた。

 ちぇっ。けち!

 そうこうしている内に、お兄ちゃん達の会話は変身ブレスの事へと移行したらしく、お兄ちゃんが発する言葉は、ああ、とか、成る程、とか、うんうん等という相槌だけになった。

「そうか。分かった。伝えておくよ。ロッカにもよろしく伝えておいてくれ」

 お兄ちゃんは最後の言葉にだけ、何故か笑いを滲ませ、電話を切った。

「で、何だって? ロッカは今から帰って来るの? それに、ブレスはあったの?」

 矢継ぎ早に尋ねると、お兄ちゃんは炒飯をつぎ分け始めた。

「ねえ、ねえって」

 お兄ちゃんの服を引っ張って注意を引こうとしていると、お母さんに頭を(はた)かれた。

「少しは落ち着きなさい。お兄ちゃんが炒飯をつげないでしょう」

 そういうお母さんの目付きは、心持ち据わって来ている気がする。

 寝不足と疲労だけじゃなく、空腹というトリプルパンチがボディに効き始めた証拠だった。

「すみませーん」

 引き攣った笑いを浮かべながら、逃げる様にテーブルに着いた。

「で、どうなの?」

 ご飯を食べ始めた私は、再びお兄ちゃんに尋ねた。

 お兄ちゃんは苦笑しつつも、ロッカは今日帰らない、と答えた。

「にゃんへ?」

「将美、飲み込んでから話しなさい」

 お母さんに怒られて、慌てて水で飲み込むと聞き直した。

「何で?」

「今日、お前のデータを取っただろう」

 と予想外の答えが帰って来た。

 今日取ったデータを元に、私専用のスーツを作ってくれる事になったのだという。

「え? だって私、臨時だよ? わざわざ作らなくても」

 というと、お兄ちゃんに怒られた。

「馬鹿か、お前。戦いを舐めてんじゃないのか? これは遊びじゃないんだぞ。今は未だ辛うじて勝ててはいるが、邪衆魔の力は未だ未だ未知数だとも言えるんだぞ。万策を尽くせるのなら、尽くしておいた方がいいに決まっているじゃないか」

「そりゃあ、まあ」

 正論過ぎて、返す言葉も無かった。

「……にしても、それとロッカと何の関係があるの?」

「ああ、その作業に、あいつの力が必要なんだと」

 ……はい?

 いや、ロッカは確かに有能だよ?

 でもさ、ロッカに何をさせるつもりなんだろう。

 私はロッカが自分の毛を抜いて、その毛でスーツにミシンをかけている図を想像しげんなりした。

 な、何か、リアルに嫌な想像しちゃったよ。

「あ、それとブレスも向こうで預かっているそうだから、心配いらないってよ」

 お兄ちゃんの言葉に、私はスイッチが入ったかの様にご飯をガツガツとかき込み始めた。

 そしてふと、ロッカもちゃんとご飯を食べているのだろうか、と考えたのだった。

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