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防衛戦隊ディフェンジャー  作者: きり
第1章 普通の(?)の女子高生
23/26

21 突然の訪問者

「やれやれ、やっと終わった」

 戦いを終え、変身を解いた緑の人がそう言って伸びをした。

 事実、私が現場に着いた時には、ディフェンジャーの方が押され気味だった。

 今日の敵は初めて見る邪衆魔で、何故か今日に限って邪衆魔以外、誰の姿も見当たらなかった。

 なのにディフェンジャー四人相手に優勢だったという事は、今日の敵がかなりの手練(てだれ)だった事を物語っていた。

 何とか邪衆魔を聖神域から追い返す事の出来た私達は、身体中の打ち身にやっとの体であった。

 次々と皆が変身を解いていく中、やっと私もはれて素顔デビューか、とドキドキしながら解除ボタンに手を伸ばした。

 と、その時、私はある重大な問題が残っていた事に気が付いた。

 私、お兄ちゃんに未だ、この人達に引き合わせて貰ってないじゃん!!

 前を行く四人の後ろ姿を見ながら、背中を嫌な汗が流れ落ちていくのを感じた。

 私一人で、この癖の強いメンバーと行き成り対峙する事なんて、出来ないって!

 散々、お母さんやお兄ちゃんに古い体質を持つ封神笛を守り伝えて来た四家の人達の話を聞かされた後だ。

 口八丁手八丁のお兄ちゃんなら兎も角、一介の女子高生が、そんな彼等を説得出来る訳がない。

 私は音も立てずに後退ると、小声でロッカに回収してくれる様に頼んだのだった。



「うわーっ!!」

 バシャンと水の中に落ちる音と、ガラガラガッシャンという色んな物が落ちてぶつかり合う音が、一斉(いっせい)に私を出迎えた。

 ……じゃなく、私の着地地点はお風呂場だった。

 昨晩、洗濯をする為に残しておいた残り湯に、私は見事に着地してしまったらしい。

 その際、風呂蓋やシャンプー、リンス、洗面器、その他諸々をも巻き込んでの着地になってしまった様だった。

 何時もならば、私の部屋か玄関の中に転送してくれるロッカにしては、珍しい失敗だった。

 幸いと言えばいいのか、私は着地する直前に変身を解除していた為、変身スーツをびしょ濡れにせずに済んだ。

 私は濡れた服を脱ぐと、それを全自動洗濯機に放り込むと、籠の中にあった汚れ物も一緒に中に入れ、スイッチを入れた。

 下着姿で脱衣所を出ると、何故かそこにいる筈の無い人物が立っていた。

「お帰りなさい。早かったですね」

 ピンクの髪を揺らし、そこにはシロさんが立っていた。

 一瞬、私は何故彼がそこにいるのだろうと呆然と立ち尽くしたのだが、直ぐに自分の今している格好を思い出し、叫び声を上げると、二階の自分の部屋までダッシュしたのだった。


 何と無く今度は現場に向かった時とは違い、自分の服を着て恐る恐る一階に降りて行くと、そこにはお茶とケーキですっかり寛いでいるロッカとシロさんの姿があった。例によって、ロッカは身体中、クリームだらけになっていた。

 それでいて、シチューやラーメン等の汁物に関しては、ちゃんと巨大な――ロッカにとってはだが――スプーンなり箸なりを使って器用に食べるのだから不思議だ。

「あ、将美、お帰りなさいれしゅ」

 先に私に気付いたのはロッカだった。

 ケーキ塗れの身体で私に飛び付いて来た。

 変身中であれば難無く避ける事が出来るであろうそれを、私はまともに腹でキャッチしてしまった。

 うう、また着替えなくちゃならなくなったじゃないか。

 内心、泣きながら汚れたシャツを見下ろしたが、ロッカの円らな瞳を見ると、怒る気力が失せた。

「先程は大変失礼致しました。よもやこちらの世界では、妙齢の女性が下着姿で部屋の中を闊歩(かっぽ)なさるとは、私、思ってもみませんでしたので」

 開き直って、着ていたシャツでロッカの汚れを拭ってやっていると、シロさんに声を掛けられた。

 ロッカの醜態にかまけ、一時先程の自分自身の醜態を忘れてしまっていた私は、その言葉で一瞬にして我に返った。

 ううう。ありがとう、シロさん。

 しかし先程の失態を無かった事にする為に私が咄嗟に取った行動は、惚けてしまう事だった。

「え? 何の事でしょう?」

 ロッカが手の中で何か言いたそうな顔をしていたけれど、ゴシゴシとそれまでより強く身体を拭く事で黙らせた。

 シロさんがこちら女の人の認識を誤解したままなのが多少気にかからないでもなかったが、私の保身の方を優先させていただく。

「ところで、昨日の今日でいったい何の用なんですか? もしかして、ロッカに会いにいらしたんですか?」

 それ以上、私の失態に関して話をさせない様、私は無理矢理話を変えた。

 一瞬、何か言いたげに口を開きかけたシロさんは、一度口を閉じると私を窺う様に見詰めた……気がした。今日も昨日と同じサングラスを掛けていたので、本当のところはよく分からなかったんだけれど。

 そして、次にシロさんが口を開いた時に出て来た台詞は、私の全く予想もしていない言葉だった。

「今日は貴女をお迎えにあがりました。今からお付き合い願えますか?」

「え? 私を迎えに来たんですか?」

 私は意外な言葉に、そのまま言葉を返しただけだった。

 けれどシロさんは、それを肯定しただけで、特に理由は教えてくれなかった。

「あの、別に行ってもいいんですが、少し待っていただけますか?」

 私がそう告げると、彼は鷹揚に頷いて言った。

「そうですね。貴女もその服のままではお嫌でしょうしね。構いませんよ。急ぎませんから、ゆっくりどうぞ」

 言われて初めて、私は自分の姿を思い出した。

 確かに、ケーキで汚れたままの服で何処かに行くのはまずいだろう。

 私は有り難くリビングを出ると、未だ洗濯の途中の洗濯機の中に着ていたシャツを投げ込むと、周囲を窺って、ダッシュで二階に駆け登ったのだった。

 それにしてもいったい何の用があって、シロさんは私を迎えに来たのだろう。

 そんな事を考えながら、昨日お兄ちゃんに貰ったお古のシャツに袖を通す。着てみると、かなり着古したらしく、生地がテロンテロンになっていた。

 次いで、穿いていたズボンも私の物からお兄ちゃんのお古に穿きかえた。

 彼が何処に連れて行くつもりか分からなかったが、もし基地に連れて行くつもりであるのならば、女物の服で行くよりは、男物の服の方がいいだろうと思ったのだ。

 何処に連れて行かれてもいい様に、財布と鍵を掴むとポケットに放り込んだ。

 時間を見ると、洗濯機が止まるまで、未だ暫くかかりそうだったので、鞄から英語の教科書とノートを取り出すと、明日の予習に取り掛かった。

 集中して勉強していたらしい。階下からロッカが洗濯機が止まったのを知らせて来た。有り難い事なのだが、何時も何故、こんな時、ロッカは通信機を使わないのか不思議に思いながら、立ち上がった。

 慌てて部屋を飛び出し、お兄ちゃんの部屋に寄ってフックに掛けられた帽子を一つ拝借すると、それを被って階下に下りた。

 階段下でロッカを拾うと、リビングに顔を出し、あともう少し待ってくれるようシロさんに頼む。

 シロさんが返事をする前に、ロッカをシロさんに押し付けると、どちらともなく、暫く相手をして欲しいと言いおいて、脱衣所に向かった。

 急いで洗濯物を畳んで全て籠に入れると、直ぐに干せる様にしておいた。

 こうして直ぐに叩いて皺を伸ばして畳んでおかないと、後で干すにしろ、折角洗った洗濯物が皺くちゃになってしまうのだ。

 そこまでし終えると、私はリビングにとってかえし、シロさんに言った。

「すみません。お待たせしました」

 ロッカがかわりに事情を説明してくれていたらしく、シロさんは特に何も言わずに立ち上がった。

 玄関で靴を履き、鍵を開け様とポケットから鍵を取り出そうとしていると、シロさんに止められた。

「外に出る必要はありません」

 シロさんはそう言うと、ロッカを私に押し付け、サングラスの縁を指で何度か叩いてみせた。

 と、次の瞬間、ロッカに何時も転送される時と同じ感覚が身体を襲った。

 私は抱いていたロッカを落とさない様に、腕にギュッと力を入れた。ロッカも同じ気持ちらしく、必死に私のシャツを握っている。

 高層ビルのエレベーターに乗った時の様な、何時もの妙な感覚がおさまると、私は昨日来た建物の前に立っていた。

 昨日と違ってまだ明るい為、周囲の様子がよく見えた。

 鬱蒼とした森には、小さな可愛らしい花が所々顔を出し、小鳥の囀りまで聞こえて来た。

「さて、一応、昨日のおさらいをしてみましょうか」

 シロさんに促され、私は昨日彼に教えて貰った通りにして扉を開けた。

「完璧です」

 そう満足げに頷くと、シロさんの後に着いて、私は建物の中に入って行った。

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