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防衛戦隊ディフェンジャー  作者: きり
第1章 普通の(?)の女子高生
22/26

20 ヒーロー(仮)の事情

「でも、この間みたいに、誰かに変身を解かれた時に、万が一制服姿だったらどうしよう」

 ご飯を食べながら私が呟いた。

 お母さんやお兄ちゃんの言う通りに男の子の振りをする事に関しては、もう仕方の無い事と諦めがついていた。

 ディフェンジャーの皆に男の子の振りが通じるか否かは、この際置いておくとしても、女子高生の制服姿で私が現れたら男の子というのは流石に無理があるだろう。

 家にいれば、お兄ちゃんお勧めのお古を来ていればいいだけなのだが、学校にいるとそういう訳にもいかない。

「そう言われれば、それもそうだなぁ」

 お兄ちゃんは他人事の様に相槌を打つと、大口を開けてハンバーグの塊を口に放り込んだ。

「お前、今、現場にはロッカに転送して貰っているんだったよな?」

 暫く口の中でハンバーグを咀嚼した後、お兄ちゃんが言った。

「うん。して貰ってるよ。それがどうかした?」

 そんな今更聞かなくてもいい様な事を何故聞くのだろうと、首を捻った。

 この子がいなけりゃ、私は邪衆魔が現れたら事も分からないし、現場に駆け付ける事すら出来ないのだ。

 それはディフェンジャーの皆も同じだろう。未だ会った事は無いけれど、皆にもロッカの様な存在がいるに違いない。

 と、無意識にテーブルの上で巨大なハンバーグと格闘しているロッカを見遣った。

「じゃあ、もしかして授業中に呼ばれたりもしているのか?」

 ふと思い立ったかの様にお兄ちゃんが尋ねた。

「えーっ、それは無いよー」

 私が笑ってみせると、お兄ちゃんがニヤリと笑ってみせた。

「成る程。それは使えるな」

 お兄ちゃんはそう言うと、指で一心不乱にご飯を食べているロッカの背を突いた。

「何れしゅか?」

 顔を上げたロッカはご飯粒と煮込みハンバーグのソースを顔中に付けて、さも用があるならさっさと済ませろという風に言った。

「悪いんだが、ディフェンジャーの召集が掛かったら、これからは一旦こいつを家に転送してから現場に飛ばしてやってくれないか?」

 その言葉に、いかにも面倒臭いとでも言わんばかりに手に付いたソースを舐めていたロッカに、お兄ちゃんは賄賂だと言わんばかりに、自分のハンバーグを大きく切り分けてロッカの目の前にちらつかせた。

 いや、お兄ちゃん、流石にロッカでもそれまでは食べられないでしょう、と思っていたら、勿体振った様に、仕方がないですね、とロッカが答えた。

 するとロッカに礼を言った後、お兄ちゃんは何を思ったのか、ちらつかせていたハンバーグを何事も無かったかの様に自分で食べてしまったのだった。

 ロッカが呆然とする中、私はそれを見なかった事にしてご飯を無言で食べたのだった。



「ねぇ、ロッカ、ロッカはどうして今日来なかったの?」

 風呂に入り、髪をドライヤーで乾かしながらロッカに尋ねた。

 結局、あの後、お兄ちゃんに貰えると思っていたハンバーグが貰えないと分かったロッカが拗ねてしまい、話を聞くどころでは無くなってしまったからだった。

「またその話れしゅかぁ?」

 ロッカは洗面器という名の風呂に()かりながら、溜め息混じりに言った。

 本当は私と一緒に入ってくれれば後片付けも楽でいいのに、何故か何時も一緒に入るのを頑なに拒むのだ。その為、私がお風呂から上がる際、洗面器に湯を汲み、部屋に持ち込むはめになるのだった。

「いやさ、お兄ちゃんも言っていたけど、シロさんも会いたがってたから、さ」

 よいしょ、と風呂から上がったロッカが私が何時も通り洗面器の横に用意していたタオルと格闘し始めるのを見計らい、洗面器を取り上げた。

 湯を捨てて洗面器を風呂場に流して戻って来ると、ロッカはベッドの上にいた。器用にドライヤーを枕と布団で固定し、気持ち良さそうに髭を揺らしている。

 何時も思うんだけれど、ロッカって、妙に人間臭いんだよね。

 だから、ずっと私、ロッカを鏡異人だと思い込んでいたのかもしれない。

 そんな事を考えながら、明日の準備をしようと教科書を揃え始めた時だった。

「将美が髪を切ったかられしゅよ」

 ドライヤーの音に混じり、ロッカの声が聞こえた様な気がした。

 振り向くとベッドの上で、ロッカがドライヤーの風に煽られながら、スヤスヤと気持ち良さそうに寝息を立てていた。

 私は聞き間違えだったのだろうか、とドライヤーのスイッチを切ると、ロッカにそっと布団を掛けたのだった。



     *



 次の日、鷺沼家は私の悲鳴で始まった。

 髪を切った事をすっかり忘れていた上、未だ寝惚けていた私は、朝、顔を洗って洗面台の鏡にうつる自分の姿を見て悲鳴を上げたのだった。

 駆け付けてくれたお兄ちゃんとロッカは、直ぐに状況を飲み込むと、声を殺して笑っていた。

 うう、酷いよ、二人とも。

 納得した事とは言え、未だ慣れないその髪型を必死に整え様と撫で付けるも、短くなり過ぎた私の髪は、好き勝手な方角へと暴走する。

 いい加減、諦めると服に着替え学校に向かった。

 学校に着くまでに何人もの友達に会ったけれど、こちらが声を掛けなかった為か、誰一人として私に気付いた者はいなかった。

 この調子でいくと、青の人も前に私に会った事に気付かないだろう、と前向きな事を考えてはみたものの、虚しい事には変わらなかった。

 自分のクラスの前に着くと、意を決して扉を開けた。

 クラスの皆は、一瞬、誰だこいつ、と言わんばかりの冷たい視線を私に送って来た。

 うう、視線が痛い。

「ま……将美!?」

 最初に私だと気付いたのは藍子ちゃんだった。

 流石、我が友!

 と、それまで皆に私と認識して貰えなかった寂しさも手伝って感動していると、次に彼女が言った言葉にコントのコケを本当にしてしまいそうになった。

「あんたってば、本当は男の子だったのーっ!?」

 その台詞に私に反してクラス中がどっと笑った。

 ありがとう。ある意味、私の友達らしいよ。

 私は心の中で、クラスの皆にウケたのならいいや、とだだ泣きしたのだった。

 その日は一日中、クラスメートみならず、一度話した事がある程度の別のクラスの人間にも、何かあったのかと尋ねまくられる結果となった。

 また、授業の度に訪れる教師達までもが、授業終了後、わざわざ私に声を掛けて心配する始末だった。

 こうなってみると、藍子の様にネタ質問が懐かしくなってくるから、自分でもかなり麻痺してきているのでは無いかと、心配になって来る。

「帰るの?」

 出口で一緒になった藍子に尋ねられた。

 早くこの質問攻めから逃げ出したくて、その日の帰りのホームルーム終了後、速攻で教室の出口に向かった。

 そうだと答えると、藍子に部活には出ないのかと尋ねられた。

 そう言えば、藍子には私が合唱を辞める辞めないでフラフラしていた時に、心配して貰っていたっけな。

「辞めたんだ。心配かけてごめんね」

 向き直って答えると、藍子は、そうか、とだけ言った。

「何があったか知らないけど、頑張るんだぞ」

 両手でポンと肩を叩き、じゃあね、と言って藍子は教室を出て行った。

 私はそんな藍子の後ろ姿を廊下の先に消えるまで見送ると、足取りも軽く、学校を後にしたのだった。

 学校を出て、最寄り駅を出た私は、名札に着けっ放しになっていた通信機からロッカの声が聞こえて来た。

『将美、出動するれしゅ!』

 興奮したロッカの声に、私は慌てて周囲を見回した。

「セ、セーフ……」

 ロッカの声を不審に思っている様な人影は、特に見当たらなかった。

『将美、セーフなんて言ってる場合じゃないれしゅよっ!』

 私の声を聞き付けたロッカが再び喚き、名札を両手で押さえ込むと路地裏に駆け込んだ。

「ちょっと、大声を出さないでよ!」

 ヒソヒソ声で、最大限に名札に向かって注意をする私の姿をもし今見た人がいたならば、きっと危ない人に映ったに違いない。

 けれどロッカは私の注意等何処吹く風とばかりに、転送、と叫んだ。

 ……ったく。

 お兄ちゃんとの約束通り、一旦家に呼び戻された私は、昨日の内に用意しておいたお兄ちゃんのお古に素早く着替えた。

 着替え終わると変身ブレスを装着し、ブレスのボタンを押しながら、変身、と呟いた。

 何時もの様に変身し終えても、ロッカは私の前に姿を現さなかった。

『転送!』

 通信機からロッカが元気に叫ぶ声が聞こえたかと思うと、私は仲間が戦っている場所へと飛ばされる。

 その間、私は、準備が整った事をロッカは何時もどうやって知ったのかと不思議に思っていたのだった。

 現場に着くと、私は腰ベルトに装着していた封神笛を手にし、敵に向かって駆け出したのだった。

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