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防衛戦隊ディフェンジャー  作者: きり
第1章 普通の(?)の女子高生
21/26

19 シロさん

 建物の外に出ると、シロさんに建物への入り方を指南された。

 来た時には暗くてよく分からなかったのだけれど、壁に同色で出来た小さな突起を発見した。

 それを押すと、来た時と同じ様に壁の一部が反転して黒いモニターが表れた。

 言われるまま、モニターに手の甲をモニターに翳す。すると先程は見えなかったのだけれど、緑色の光の筋が手をなぞる様に移動し、最後にピッという小さな電子音が聞こえた。

 次に眼をモニターに近付ける様に言われた。モニターの奥からカシャカシャという聞き慣れない音がしたかと思うと、画面上に“Error”という文字という文字が表れ、同時に警報音が鳴り響いた。

 咄嗟に耳を塞ぎ目を閉じると直ぐに音が止み、誰かに肩を叩かれた。

「失礼しました。登録していない者に対してはこの様になります、という実例を見せるつもりは無かったのですが……。後で今取った貴女のデータをちゃんと登録しておきますので、次回からは今と同じ手順で中に入れますから、ご安心下さい」

 シロさんはそう言って恐縮した。

 余りにも驚いたのとその大音量に未だ耳がキーンと鳴っていると、シロさんに顔を覗き込まれた。

「少しじっとしていて下さい」

 そう言ってシロさんがサングラスを上げた。

 ……ところまでは見えた気がした。

 いや、一瞬だったからもしかしたら上げたかすら確信は持てなかったんだけれど。

 でも一瞬チラリとサングラスの奥に潜む赤い何かを目にした気がする。

 今のって、さっき見たのと同じ……?

「如何ですか? 未だ耳鳴りがしますか?」

 尋ねてはいたけれど、明らかに答えを知っていて聞いている口調だった。

 確かに、もう耳鳴りはしていない。していないのだけれど……。

「あの……今のももしかして耀稀、ですか?」

 しかしシロさんは笑っただけで、答えてはくれなかった。

「将美、遊んでないで帰るぞ」

 お兄ちゃんの声に振り向くと、シロさんが私の背中を押した。

「もしかして、さっき、私が倒れたのも……」

 振り向きシロに告げた。

 けれど今度も微笑むだけで、その口から答えを聞き出す事は出来なかった。



「ただいまぁ」

 家に帰りリビングに入ると、ロッカがそわそわした様子で私達を待っていた。

「お帰りなさいれしゅ!」

 ダッシュで私に飛び付こうとし、寸前で立ち止まった。

「将美が男の子になっちゃったれしゅぅ……」

 言うに事欠いて、何て事を言うんだ!

 私は拳をギリギリと握り怒りを我慢する。

 車を車庫に入れ、遅れて部屋に入って来たお兄ちゃんは、床に這い蹲り嘘臭い泣き真似をするロッカを見て、軽く足の先で突いた。

「何愉快な事してるんだ?」

「あ、孝道様! お帰りなさいれしゅ!」

 言うなりお兄ちゃんの身体を駆け登り、肩に乗ってお兄ちゃんの首にその身体を押し付けた。

 ……何、この待遇の違いは。

 しかしロッカのこの妙な媚びを売る様な態度も、お兄ちゃんの暑苦しいの一言で一蹴された。

 ざまあみろ!

 私は意地悪な気分でお兄ちゃんに(はた)き落とされたロッカに一瞥をくれると、冷蔵庫から冷えたお茶を取り出した。

「カーッ!!」

 気分的にビールジョッキに並々と注いだそれを一気に飲み干すと、酔っ払いよろしく声を上げた。

 すると妙にテンションの高いロッカに、オジサン臭いと笑われた。

 次いでお兄ちゃんにも腰に当てた手がオジサンの証明だと指摘される。

「放っといてもらおう!!」

 言った後に、先程鏡異界でお兄ちゃんが開き直った時に宣った台詞だと気付いた。

 いかんいかん。こんなところが似ても何の得にもなりゃしない。

 軽く首を振り、自分の言動を反省していると、お兄ちゃんがロッカに話し掛けている声が聞こえて来た。

「お前、どうして今日来なかったんだ? 皆、お前に会いたがっていたぞ」

「……孝道様、鼻の穴が膨らんでいるれしゅよ」

 きっと今、ロッカはじとっとした目でお兄ちゃんを見ているに違いない、そんな口調だった。

 とは言え、ロッカのあの(つぶ)らな黒い瞳の何処をどうすればそんな目になるのかは、私にも分からないのだけれど。

 とは言え、ロッカが鋭いという事は認めざるを得ない。

 お兄ちゃんが嘘を吐く時は決まって鼻の穴が大きくなるのだ。それは子供の頃から変わらない事実だった。

「む。そ、そんな事は無いぞ。何かの気のせいだ」

 お兄ちゃんは頑張って応戦しようとしていたけれど、(はな)っから勝負は見えていた。

 それにしても、どうしてロッカはあそこまで行くのを嫌がったのだろう。

 連れて行こうとしたら、お母さんにしがみ付いて離れ様とはせず、無理矢理お母さんから引き離すと今度は箪笥や本棚といった高い物に飛び移り逃げ回った。

 結局、夕方だった事もあり、美容院の営業時間が終わってしまっては大変だからと、お母さんの一声でお兄ちゃんはロッカを連れて行くのを諦めたのだ。

 私は兎も角、お兄ちゃんですら、最初から鏡異界に行く事になるとは思ってもいなかった筈だ。鏡異人に会いたいと言ったら、何故か連れて行かれてしまった、と言うのが真相に一番近いだろう。

 だったら何故……。

 ぼんやりとそんな事を考えながら出しっ放しだったお茶の入ったピッチャーを手に取った。

 それを冷蔵庫に入れ様と取っ手に手を掛け、扉にメモが貼られている事に気付いた。最初に冷蔵庫を開けた時には、喉を潤う事に気が急いて気が付かなかったらしい。

 私は磁石で留められたそれを外すと、書かれている事を確認すると、私は夕飯の準備に取り掛かった。

 お母さんが家を出る前に作って置いてくれていた煮込みハンバーグを電子レンジで温め直す。その間、冷蔵庫に入れておいてくれたサラダを器に移し替え、味噌汁の鍋を火にかけた。

 温め終わったチンという音を合図に、ハンバーグの載った皿を取り出し、一緒に温めた温野菜と共に皿に移し替えテーブルに並べた。

 ご飯を三人分茶碗によそうと、二人――と言うには微妙に語弊がある気がしなくもないのだけれど――に声を掛けた。

「ご飯の準備が出来たよ」

 けれど、持久戦に入ったらしい二人は睨み合ったまま全く微動だにしなかった。

 ……ったく、二人共、子供じゃないんだから。

 と、思いながら、そう言えばロッカは幾つなんだろうと、どうでもいい事を考えた。

 実際、ロッカは秘密が多過ぎる気がしないでもない。

 ここは私も参戦すべきなんだろうか、と思いながら、もう一度声を掛けた。

「ねえ、話すのは食べながらでも出来るんじゃない?」

 それでも動こうとしない二人に最期通牒をつきつけた。

「食べないのなら、私が二人の分のハンバーグを食べちゃうからね」

 冗談で言った私の言葉に、二人はさっきまでの殺気立った状況等嘘の様に立ち上がった。

「待て! 早まるな!!」

「た、食べるれしゅ!!」

 ……早まるも何も、普通、少し考えれば分かりそうな事なのに。

 私は二人に怨みのこもった視線を向けた。

 うちのお母さんの作るハンバーグは、煮込み、焼きを問わず何故か昔から大きいのだ。お兄ちゃんと私は、密かに昔からお母さんの作るハンバーグを草履ハンバーグと呼んでいる程である。

 因みにコロッケも同様に大きかったりもするのだが。

 ……って、横道に逸れた。

 兎も角、それ程大きなハンバーグを私が一人で三人分も食べられ訳も無いのに、何故二人はこうも危機感を感じたのだろうか、と遺憾に思ったのだった。

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