8.二回目の魔力測定 side F
「お待ちください、サクラ殿。」
サクラの姿を見つけたが、用もないのでスルーするつもりだった。
彼女はこの世界に来た日に魔力測定を受けて、全くないと報告されている。
とはいえ異世界からの未知の存在なため野放しするわけにいかず、城の敷地内で情報を与えず留めている。
彼女の扱いはイレギュラーなためどう扱っていいのか、検討中なのだ。
今まで、あの召喚陣を使って召喚された異世界人は皆膨大な魔力を持っており、魔獣の王退治をしてくれていた。
当たり前である。
召喚の陣に呼ぶ人間の条件に魔力持ちと限定しているのだ。
なのに、なぜ魔力がない彼女があの陣から呼ばれたのか。
なにか意味があることなのか。
結論が出ないため、彼女の身柄はこの討伐が終わるまで状態維持だ。
なにもかも終わったら、彼女の処遇は誰かが決めてくれる。
討伐メンバーの自分にとって、関わる必要のない人間だった。
久しぶりに姿の見せた彼女からあるはずのない魔力が感じられるのだ。
聖女にはまったく及ばないが、一般魔術師くらいの量があるのではないか。
呼び止めない訳にはいかない。
確かめなくては。
「サクラ殿、お待ちを!」
私の声に反応して、こちらを向いたが立ち止まる様子はなかった。
「えーと、誰でしたっけ?すみませんが、今急いでいるので。それじゃ!」
片手で挨拶して、そそくさと立ち去ってしまった。
向かった先はどうやら研究棟だ。
仕方がない。
魔力測定器を持って、彼女の部屋を訪ねるか。
夕方、部屋にいる所を狙って訪ねたら、彼女から魔力は感じられなかった。
にわかに作ったこじつけを話し、念のため持ってきた測定器で測ったが、やはり魔力ナシを示していた。
そんなバカな。
昼間感じた魔力はなんだったのか。
訳がわからなくて呆然とする私に彼女が声をかけた。
「えーっと、神官さんのファリアーゼさん?お腹空いたんでもういいですか?」
「そ、そうですね、お手間を取らせて申し訳ありませんでした。」
道具を片付けて、部屋を退出しようとして扉に手をかける。
「あの…。」
彼女がこっちをじっと見つめていた。
「魔力ってあれば、何か変わりますか?」
変わるかなんて愚問だ。
もし、聖女が二人来たのだったならば、と考えずにはいられない。
聖女一人だけが来たのなら、こんな未練がましいことを思わなかったのに。
なぜ、魔力がない役立たずのあなたはここに来たのか。
あなたが魔力を持たないせいで、どれだけの犠牲が出るのかわかっているのか。
あなたが魔力を持っていさえすれば…!
口に出してはいけないと理性が止める。
でも頭の中はこれらの言葉が巡り続ける。
八つ当たりだとわかっているはずなのに。
下手なことを口走る前に、急いで部屋を離れるしか出来なかった。