第41回
「ああ…それなら私も知っています。この場合は、[時]が対象としている限られた時間での人間行動ではないのですが、常識で考えられない余りにも惨い犯行という点では一致しますね。時間があるがゆえに毒された、と言うしかないですよ、この場合は…」
塩山が注釈して付け加えた。
「ええ…、俺もそう思います」と私も追随した。
「やはり霊的なモノが介在しているんでしょうか?」私の方を向き、塩山がそっと訊く。
「いや、その点は敢えて断言はしません。ただ、[時]としては、その可能性が高いという観点で研究しましょう。一度、適当な霊媒師にコンタクトをとる、というのも手でしょうか…」
「それはいいですね」私の発案に塩山はすぐ賛同した。
「真砂稲荷の宮司に沼澤草男っちゅう人がいまんにゃけど、あの人に頼んだら、なんかええ話、聞かして貰えまっせ」
「悟君、その人をよく知ってるの?」
私は初めて耳にする、その沼澤という人物に好奇心が湧いた。
「へえ。第一あの人と僕とは親の代からの付き合いですよって、そらもう…」
「悟君とその沼澤さんとかいう人が、どんな間柄なのかってことは別にいいんだけど、ここはひとつ[時]の為と思って、一肌脱いでくれよ」
「ほらもう…。なんせ沼はんは霊媒師もやらはりますよって」
「そんな人がこの町にいたとは驚きです」
意外だったのか、塩山の声が俄かに大きくなった。
「いや、俺もそれは知らなかったなあ」
「いつやらも出会うたとき言うたはりましたんやが、『つい先だっても、狐に憑かれた子供がおって、その親に頼まれて霊を降ろしたんじゃ』って…」
「降霊ですね」流石に塩山は、なにかにつけて物知りだ。軽く言い切ったのには参った。
悟君の話を好奇心を隠し耳を欹てておく。そして、聞いていない素振りで何げなく聴く。
「僕もね、始めはオーバーに言うたはるなあと思おとったんでっけどな。聞いてるうちに身につまされましてな。なんか全部ほんまに思えてきよりましたんや」
「ホォ~、それでどうなりました?」
「なんでも、その憑かれたっちゅうのは、高校生でした」
「偶然でしょうが、私の体験と似ていますね?」
「そうでんな。塩山はんも高校の時分でしたな…。話を続けまっさ。そいで、ほの憑かれた学生の親が沼はんに頼んだと、まあそういうこってすわ。沼はんとしては、頼まれたら、まあ行かなしゃあない、ってなことで、出かけやはりました。家に着くと、当人は部屋に閉じ籠ってしまっとる。なんとしたもんかいなあ、と思い倦ねて茶を啜る」
「やけに詳しいですね。細かい描写だ…」
「いや、茶を啜ったかどうかは分かりまへんにゃけどな。それは僕の想像でんがな、ハハハ…。ほんで、部屋に入り、いつもの呪文って言うか祝詞みたいなモンを唱え、持ってる数珠で学生の背中を、しこたま打った、と思おとくれな…」
講談師の語り口調のように、益々、悟君のテンションは高まっていく。
続




