表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の勘違いで女の子に転生した俺、ギルドで測定不能と言われたけど普通に無双してました  作者: 夜華カナタ
第一章 無色判定、はじまる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/72

第七話 昇格試験と呼ばれるもの

誰かと一緒にいることは、楽しいことばかりではありません。


それでも、分け合えるものがあるなら。

セレスたちは今日も、少しずつ前へ進みます。


「――というわけで、セレスにも正式に昇格試験を受けてもらいたいんだけど」


依頼を終えてギルドに戻ると、受付の女性が改まった様子でそう切り出した。


「昇格試験?」


「無色の方でも、実績が認められれば正式ランクへの再鑑定が可能なんです。今回のセレスさんは、その……前代未聞の実績なので、特別に試験の枠を用意させていただきました」


「面倒だから、水晶をもう一回試すだけじゃ駄目なの?」


「それが……何度試しても、無色のままなんです。原因は、こちらでも分からないんですが」


受付の女性は申し訳なさそうに肩を落とした。


セレスは軽く肩をすくめる。まあ、女神由来の力が普通の鑑定に引っかからないのは、今さら驚くことでもない。


「試験の内容は?」


「指定された討伐依頼を、パーティーで完遂すること。難易度は銅ランク相当の依頼です。今回は――」


差し出された依頼書には、町の東にある廃坑で発生している魔物の群れの掃討、と書かれていた。


「廃坑、ね。分かった」


「私も同行するわ。銅ランクの指定依頼なら、私が見届け人としてついていれば話も早い」


横から口を挟んできたのは、パーティーに同行し始めて数日が経つイリスだった。


「金ランクのお墨付き付きか。豪華だな」


「別に、あんたのためじゃないから」


「はいはい」


軽くあしらうセレスに、イリスはむっとした顔をしたが、それ以上は何も言わなかった。



廃坑は、想像していたよりも入り組んでいた。


かつて鉱山として使われていたらしく、無数の坑道が蟻の巣のように張り巡らされている。松明の明かりだけを頼りに、四人は奥へと進んでいった。


「気配、増えてきたな」


ガロンが低く呟いた。


壁の向こうから、無数の足音――正確には、爪が地面を引っ掻くような音が響いてくる。


「来ます!」


ミュゼの声とともに、闇の奥から一斉に魔物が押し寄せてきた。


全身を甲殻で覆われた、蟹のような魔物の群れだった。数はざっと二十を超えている。


「囲まれる前に、突破口を作るぞ!」


ガロンが先頭に立ち、大剣を横薙ぎに払う。


二体、三体と、甲殻を割られた魔物が吹き飛んだ。


「ヒールとプロテクト、二重掛けしますね!」


ミュゼの詠唱とともに、淡い光がパーティー全体を包む。


防御と回復を同時に行う、器用な支援だった。


「あんたたち、連携くらいはできるみたいね」


イリスがそう言いながら剣を振るう。


一撃で三体を斬り伏せる、鮮やかな剣筋だった。


「そういうあんたは、単独行動が得意そうだけど」


セレスも群れの一角に切り込みながら、軽口を返す。


木の枝ではなく、今日は正式な剣を借りてきていた。手首の紋様が、わずかに熱を持ち始める。


(数が多い。誰かの力を借りるより――)


考えを巡らせながら、セレスは目の前の魔物を斬り伏せていく。


四人での連携は、思いのほか噛み合っていた。


ガロンが敵の意識を引きつけ、イリスが的確に数を減らし、ミュゼが後方から支援と回復を回す。セレスはその隙間を縫うように動き回り、崩れかけた戦線を繋いでいった。


「セレス、右!」


「見えてる」


振り返らずに剣を振るう。


ガロンの声だけで、位置と距離が正確に分かった。


前世由来なのか、それとも別の何かなのか――理由は分からない。だが、こういう「勘」だけは妙に鋭かった。


群れが半分ほどに減った頃、坑道の奥から一際大きな影が姿を現した。


「――親玉、か」


他の個体の倍はある甲殻蟹が、鋏を振り上げてこちらを睨みつけている。


「あれが本命ってやつだな」


ガロンが息を整えながら呟いた。


ミュゼが不安そうな顔をする。


「大丈夫でしょうか……」


「大丈夫。ここまでで、大体コツは掴んだ」


セレスは短くそう言うと、親玉に向かって走り出した。


手首の紋様が、これまでにない強さで熱を持つ。


【対象:甲殻蟹(親玉) 特性を検出――部分継承を実行】


全身の肌が、瞬時に硬質な甲殻へと変わっていく。


振り下ろされる鋏の一撃を、セレスは正面から受け止めた。


「なっ――」


衝撃を殺しきれず後退はしたものの、傷一つなかった。


「借りるよ。悪いけど」


セレスは硬化した拳を握り、そのまま親玉の懐へと踏み込んだ。


「オラァ!」


拳が甲殻の隙間に叩き込まれる。


轟音とともに、巨体が大きくのけぞった。


畳み掛けるように、ガロンの大剣が横から加わる。


「終いだ!」


二人の連撃を受けた親玉は、ひときわ大きな咆哮を上げると、その場に崩れ落ちた。


坑道内に、静寂が戻る。


「……勝った、のか」


ガロンが肩で息をしながら呟いた。


ミュゼが安堵の表情で駆け寄ってくる。


「お疲れ様です、みんな! 誰も大きな怪我がなくて良かった……!」


イリスは剣についた汚れを拭いながら、セレスの方をちらりと見た。


「悪くない連携だったわね。あんた、思ったより周りをよく見てる」


「褒めてる?」


「褒めてるのよ、これでも」


ぶっきらぼうにそう言うイリスに、セレスは小さく笑った。



依頼完了の報告を終えると、後日、再鑑定の結果が届いた。


相変わらず、水晶の反応は「無色」のまま。


だがギルドはそれとは別に、実績に基づく特例として、正式に「銅ランク」の資格をセレスに与えることを決めた。


「無色のまま銅ランク、っていうのも変な話ですけどね」


受付の女性は苦笑しながらそう言った。


「別にいいよ。呼び方なんて、後から誰かが勝手に決めるものだし」


セレスは軽く肩をすくめると、新しく発行された冒険者証を受け取った。


無色という表示の隣に、小さく「銅」の文字が刻まれている。


(一歩ずつ、か)


悪くないペースだ、とセレスは思う。


手首の紋様に軽く触れながら、彼女は仲間たちの待つ場所へと歩き出した。

あとがき


第七話をお読みいただき、ありがとうございます!


ここからアーク2、銅ランク編のスタートです。


四人での初めての本格的な連携バトル、いかがだったでしょうか。それぞれの役割がはっきりしてきて、書いていてとても楽しいパーティーになってきました。


イリスの素直じゃない褒め言葉も、今後どんどん増えていく予定です。


「無色のまま銅ランク」という、少し矛盾した肩書きを背負ったセレス。この先も、数字では測れない強さを積み重ねていく姿を描いていきます。


★評価・ブックマーク、感想でのコメントがいつも励みになっています。

次話もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ