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女神の勘違いで女の子に転生した俺、ギルドで測定不能と言われたけど普通に無双してました  作者: 夜華カナタ
第一章 無色判定、はじまる

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第六話 無色の一撃

戦いの最中でも、人は意外といろいろ考えます。


怖いこと、守りたいこと、そして――自分に何ができるのか。

セレスたちの距離が、少しだけ変わる回です。

===== エピソードタイトル =====

第六話 無色の一撃


===== 前書き =====

「――行くわよ」


イリスの姿が、視界からかき消えた。


「速――」


驚く暇もなく、目の前に彼女の剣先が迫っていた。金ランクの実力とは、これほどのものか。セレスは反射的に体を捻り、紙一重でそれをかわす。


「へえ」


イリスの声に、わずかな驚きが混じった。避けられるとは思っていなかったのだろう。だが、その驚きはすぐに戦意へと塗り替えられる。


「面白い。もう一撃」


二撃目、三撃目と、剣が矢継ぎ早に繰り出される。


セレスは体に染みついた「何か」に従い、最小限の動きでそれを捌いていった。だが、防戦一方にしかならない。イリスの太刀筋は速く、重く、しかも無駄がなかった。


(このままじゃ、押し切られる)


冷静に状況を分析しながら、セレスは手首の紋様に意識を向けた。熱は、すでに十分すぎるほど高まっている。


「借りるよ、少し」


呟いた瞬間、視界の端に文字が浮かんだ。


【対象:イリス 特性を検出――部分継承を実行】


次の瞬間、セレスの太刀筋そのものが変わった。


今までの受け身一辺倒の動きから一転、イリスの剣の速度に食らいつくような、鋭い踏み込み。


「な――!」


イリスの目が、初めて大きく見開かれた。


自分と同じ速度の剣が、目の前から返ってくる。それも、明らかに未経験のはずの相手から。


二人の剣が、幾度となく交錯した。木々の間に、金属の擦れる音が絶え間なく響き渡る。


ガロンとミュゼは、固唾を呑んでその攻防を見守っていた。


「あの子、イリスさんの動きに合わせて……」


「ああ。多分、あれが噂の力だ」


鍔迫り合いの中、イリスがぐっと力を込める。


「その動き……私の剣を、真似てるの?」


「真似じゃない。借りてるだけ」


「屁理屈ね」


「事実だよ」


押し合いが均衡した、その一瞬。


セレスは力を抜き、あえて体勢を崩すふりをした。イリスがわずかに前のめりになる――その隙を、逃さなかった。


「――そこ」


体を沈め、イリスの脇をすり抜けながら、木剣代わりに持っていた棒――道中で拾った、ただの木の枝――を、彼女の首筋にぴたりと当てる。


時間が、止まったように感じられた。


「……参った、って言えばいい?」


セレスの問いに、イリスはしばらく無言だった。首筋に当てられた枝を、じっと見つめている。


「……はっ」


ふいに、乾いた笑い声が漏れた。


「……本当に、無色なの? あんた」


イリスは剣を鞘に収めながら、探るような目でセレスを見た。刺々しさは消えていないが、値踏みする視線の質は変わっていた。


「私の剣を真似た――いえ、借りたのよね。それも実戦の最中に、初見で」


「借りるにも、色々コツがいるんだよ。多分」


「多分、って」


「俺もよく分かってないんだ、この力」


あっさりと答えるセレスに、イリスは呆れたようにため息をついた。


「――さっき、努力もせずに調子に乗る人間が嫌いって言ったこと、撤回はしない」


「うん」


「今のは、まぐれとは思ってない。それだけは認める」


彼女はそう言うと、腕を組んだまま、油断なく距離を保った。


「決めつけて悪かった、とまでは言わないわ。でも――もう少し、あんたを見ておく理由ができた、とは思ってる」


「別に。好きにすれば」


「……無色扱い、されすぎでしょう。あんた」


「否定はしない」


二人のやり取りに、ようやく緊張の糸が切れたのか、ミュゼが駆け寄ってきた。


「わー、すごかったです! セレスさんもイリスさんも、二人ともかっこよかった!」


「他人事みたいに言うなよ、ミュゼ。俺は心臓が止まるかと思ったぞ」


ガロンが額の汗を拭いながら苦笑する。


イリスはそんな三人を眺めて、ふと呟いた。


「――ねえ。あんたたちのパーティー、今何人?」


「三人だけど」


「そう」


イリスはしばし考え込むような素振りを見せてから、意を決したように口を開いた。


「しばらく、その依頼に同行させてもらえない? あんたの力が本物か、もう少し見極めておきたいの」


「別にいいけど。ガロン、いい?」


「……もちろんだ。金ランクが加わってくれるなら、こっちとしても願ったり叶ったりだ」


ガロンが即答すると、イリスは小さく頷いた。


「決まりね。それじゃ、依頼の続きといきましょうか」


剣を収めたイリスが、先に立って歩き出す。


その背中を眺めながら、セレスは手首の紋様に軽く触れた。まだ、微かに熱を残していた。


(借り物の力、か)


剣術の心得も、この特殊な能力も、すべては女神の勘違いから始まったものだ。


それでも――こうして少しずつ、周囲の評価が変わっていくのは、悪くない感覚だった。


「――何ぼーっとしてるの。置いていくわよ」


「今行く」


軽口を返しながら、セレスは仲間たちの後を追った。

6話をお読みいただきありがとうございます!

イリスとの一戦、いかがだったでしょうか。「借り物の力」が対人戦でどう機能するのか、今回初めて描いてみました。イリスの「嫌い」発言の裏にある過去は、まだ伏せたままですが、少しずつ本編で触れていく予定です。

これで正式パーティーは4人体制に。ガロン、ミュゼ、イリス、それぞれ違うタイプの仲間が揃ってきたので、これからの掛け合いも楽しんでいただけると思います。

★評価・ブックマーク、感想でのコメント、いつも励みになっています。次話もお楽しみに!

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