表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の勘違いで女の子に転生した俺、ギルドで測定不能と言われたけど普通に無双してました  作者: 夜華カナタ
第五章 鎖の少女、選ぶ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/71

第六十七話 廃坑の地図と、迫る足音

アルトの報告を受けて、いよいよ動く回です。

翌朝、全員が食堂に集まると、アルトが手書きの地図を広げた。街道から外れた場所に、赤い印が一つ、つけられている。


「昨夜言った通りだ。廃坑、街道の野営跡から、さらに北へ進んだ場所」


疲れの残る声で、アルトは説明を続けた。


「昔、鉱山として使われてたが、資源が尽きて放棄された場所らしい。村人たちは、近づかないようにしてるそうだ」


「見つかったのは、まずくないか」


セレスの問いに、アルトは短く息を吐いた。


「まずいな、正直。だが、逆に言えば、向こうも今、警戒を強めてる最中だ。時間をかければかけるほど、拠点を移されるかもしれない」


「急ぐしかない、ってことね」


イリスが、地図を睨みながら言った。


「規模は」


「正確には分からない。だが、出入りする人数から見て、それなりの拠点になってるはずだ」


食堂の空気が、一段と張り詰めた。ガロンが、腕を組んで低く唸る。


「本拠地、ってわけじゃなさそうだな」


「多分な。もっと奥に、本命があるんだろう。ここは、中継地点だと思う」


「一人で、よくここまで調べたわね。しかも見つかってまで」


イリスの言葉に、アルトは少し照れたように視線を逸らした。


「見つかったのは、失敗だけどな。それでも……お前らに、少しは頼りにされたいと思ってた」


らしくない言い方に、ミュゼがすかさず茶化す。


「褒めた?」


「褒めてねえよ! いつもの調子だな、お前は」


食堂に、束の間の笑いが起きた。


リンが、じっと地図を見つめていた。その目には、これまでにない緊張が浮かんでいる。


「……その場所、知ってる」


小さな声だった。全員の視線が、一斉に集まった。


「知ってる、とは」


セレスの問いに、リンは、ゆっくりと頷いた。


「昔、一度だけ連れて行かれたことがある。詳しくは覚えてないけど……あの、独特の匂いは、覚えてる。土と、鉄と、何か薬品みたいな匂い」


「行けば、思い出すか」


「分からない。……でも、行ってみないと、分からないと思う」


その言葉には、覚悟が滲んでいた。


「無理はしなくていい」


セレスが言うと、リンは首を横に振った。


「無理はしてない。……知りたいの、自分のことを。ずっと分からないままでいるより、ずっといい」


ミュゼが、そっとリンの手を握った。


「一緒に行くよ。何があっても」


「私も」


イリスとレイフィアも、続けて頷く。ノアもまた、静かにリンの隣に立った。


ガロンだけが、少し違う角度から口を開いた。


「廃坑に踏み込むなら、準備がいる。松明、縄、応急の道具。今日一日で揃えられるものは揃えよう」


「それに」とアルトが付け加える。「相手の規模が分からない以上、慎重に動くべきだ。斥候を出して、まず様子を見るのが筋だと思う」


現実的な意見に、誰も異論はなかった。


「明日、出発する」


セレスの言葉に、全員が頷いた。


装備の確認を進めながら、ノアが静かにリンへ近づいた。


「怖かったら、隣にいる。いつでも」


「……ありがとう」


短いやり取りだったが、二人の間に流れる空気は、穏やかだった。


一方で、レイフィアは荷物の中に、予備の包帯を余分に詰め込んでいた。誰に言われたわけでもなく、自然と手が動いていた。


食堂に、決意を固めた沈黙が満ちていく。窓の外では、いつも通りの王都の朝が続いていた。


その夜、セレスは一人、宿の廊下でリンと顔を合わせた。


「本当に、大丈夫か」


「大丈夫。……怖いけど、逃げたくない」


リンは、まっすぐにセレスを見た。


「今までは、ただ流されるだけだった。でも、今は違う。知りたいと思う自分の意思で、行くの」


その言葉に、迷いはなかった。手首の紋様が、静かに、けれど確かに、熱を帯びていた。


「怖くなったら、いつでも言え。無理に強がる必要はない」


「……あなたも、意地っ張りよね。人のことは言えるくせに」


図星を突かれ、セレスは苦笑するしかなかった。


「お互い様、ってことにしておこう」


「うん。お互い様」


リンは、その響きを確かめるように、口の中で小さく繰り返した。廊下の窓から差し込む月明かりが、二人の影を静かに伸ばしていた。


部屋に戻る前、セレスは廊下の窓から、廃坑のある北の方角を見やった。


廃坑の奥に何が待っているのか、まだ誰にも分からない。それでも、進むと決めた以上、もう迷いはなかった。

第六十七話「廃坑の地図と、迫る足音」をお読みいただき、ありがとうございます。


いよいよ廃坑への調査行が決まりました。リンの覚悟が固まっていく様子を、感じていただけたら嬉しいです。次話、いよいよ動きます。


面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価でも応援してもらえると嬉しいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ