表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の勘違いで女の子に転生した俺、ギルドで測定不能と言われたけど普通に無双してました  作者: 夜華カナタ
第一章 無色判定、はじまる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/76

第四話 懐かれる無色

仲間が増えると、できることも増えます。

その代わり、食費と心配事もちゃんと増えるようです。


セレスたちの拠点生活、少しだけ賑やかになってきました。


ダンジョンから町へ戻ると、セレスは半ば強引にガロンのパーティーの拠点――ギルドの奥にある一室へと連れて行かれた。


「まずは礼を言わせてくれ。本当に、ありがとうございました」


「……様変わりが早すぎない?」


先ほどまで「無色は連れて行けねえ」と鼻で笑っていた男が、今は深々と頭を下げている。落差がありすぎて、セレスは思わず半眼になった。


「命の恩人には礼を尽くす。それだけの話だ」


「まあ、いいけど」


ガロンは顔を上げると、真剣な表情でセレスを見据えた。


「単刀直入に言う。うちのパーティーに入ってくれないか」


「無色だよ、俺」


「知ってる。だが、お前が使ったあの力……あれがあれば、うちのパーティーはもっと上を目指せる。俺の目に狂いはない」


力強く言い切るガロンに、セレスは軽くため息をついた。


飄々とした調子は崩さないものの、内心では――悪くない話だ、と思っていた。


無色のままでは、まともな依頼にすらありつけない。ならば、力を貸してくれる相手がいるのなら、それを利用しない手はない。


「まあ、いいよ。よろしく」


「本当か!」


ガロンの声が弾んだ、その時だった。


「――え、ガロンさん、新しいパーティーメンバーですか!?」


部屋の扉が勢いよく開き、小柄な少女が飛び込んできた。


明るい茶色のツインテールに、動きやすそうな軽装。年齢はセレスと同じくらいか、少し下だろうか。


「おお、ミュゼ。ちょうどいいところに」


「わー、初めまして! ミュゼって言います。よろしくお願いします!」


ミュゼと呼ばれた少女は、警戒心の欠片もない笑顔で、セレスにずいっと顔を近づけてきた。


距離が近い。近すぎる。


「えっと、お名前は?」


「セレス」


「セレスさん! かっこいい名前ですね! 見た目もすっごく綺麗で……あ、その髪、生まれつきなんですか? 銀色なんて素敵……あ、目の色も左右で違う! すごい! あ、肌もきれい。なんのお手入れしてるんですか?」


「……質問、多くない?」


「あっ、ごめんなさい。テンション上がっちゃって!」


まったく悪びれる様子もなく謝るミュゼに、セレスは思わず苦笑した。


前世で、こんな距離感で話しかけてくる相手はいなかった。人懐っこさが服を着て歩いているような少女だった。


「セレスさん、実はダンジョンでガロンさんを助けてくれたんだって」


「あー、そうなんですね! やっぱりすごい方だったんだ! 無色って聞いた時は、ちょっと心配だったんですけど……」


ミュゼは無邪気にそう言ってから、はっとした顔をした。


「あっ、ごめんなさい。失礼なこと言っちゃって……!」


「別に。事実だし」


「で、でも、私、無色だからって馬鹿にする人、あんまり好きじゃないんです。ランクとか、鑑定の数字とか、そういうのだけで人を決めつけるのって、なんか違うなって……」


ミュゼは少し目を伏せながら、そう続けた。


「私も昔、才能なしって言われたことがあって。だから、セレスさんの気持ち、ちょっとだけ分かる気がします」


思いがけない言葉に、セレスは一瞬だけ意外そうな顔をした。


飄々とした明るさの裏に、思ったよりも芯のある一面が見え隠れしていた。


「……ふうん」


「な、なんですか、その反応!」


「別に。ちょっと見直しただけ」


「見直したって、失礼な!」


むくれるミュゼに、ガロンが苦笑しながら割って入った。


「まあまあ。それでミュゼ、今日からセレスも仲間に加わることになった。よろしく頼む」


「はい! よろしくお願いします、セレスさん!」


差し出されたミュゼの手を、セレスは軽く握り返した。


前世ではあまり縁のなかった、こういう距離の詰め方にはまだ慣れない。だが――悪い気分ではなかった。



「よし。仲間になったなら、一応の実力は把握しておきたい。軽く手合わせしてもらえるか」


ガロンがそう切り出したのは、その直後のことだった。


訓練場代わりの中庭へ移動し、ガロンは木剣を放って寄越してくる。


「昨日の力だけじゃなく、素の実力も知っておきたくてな。無理にとは言わんが」


「別にいいけど」


セレスは差し出された木剣を、何の気なしに受け取った。


その瞬間、体が――正確には、体に染みついた「何か」が、勝手に動いた。


構えを取る。


半歩、重心を落とす。柄を握る手の角度、剣先の向き――どれも教わった記憶などないはずなのに、驚くほど自然に、体が「正しい形」を取っていた。


「……は?」


最初に固まったのは、セレス自身だった。


「な――」


ガロンも、木剣を構えたまま完全に硬直していた。


「おい、その構え……お前、剣術やってたのか?」


「いや。やってないけど」


「嘘つけ。今の、素人の構えじゃねえぞ」


「……」


セレスは自分の手元をまじまじと見つめた。


前世の記憶を思い返しても、剣を握った経験など一度もない。だが、体はまるで長年の相棒のように、木剣に馴染んでいる。


(そういえば……)


ふと、女神の気まずそうな顔が脳裏をよぎった。


『念入りに見過ぎてしまいまして』


あの時のよく分からない発言が、今になって妙な説得力を持って蘇ってくる。


「あー、なるほど。そういうことかもしれない」


「どういうことだ」


「多分、変なところで女神の勘違いが役に立った、ってだけの話」


「意味が分からん」


「俺にも分からん」


禅問答のようなやり取りに、ガロンは眉間の皺を深くした。


だが、それ以上追及するのは諦めたらしい。木剣を構え直し、仕切り直すように距離を取った。


「……とにかく、来い。手加減はしてやる」


「別にいらないけど」


軽口を叩きながら、セレスも木剣を構えた。


「行くぞ――!」


ガロンが先に仕掛けた。


大柄な体格からは想像もつかない初速で、木剣が唸りを上げながらセレスの肩口へと振り下ろされる。


並の新人なら、反応する間もなく吹き飛ばされていただろう。


だが、セレスの体は――というより、体に染みついた「何か」は、それを見てからでも十分に間に合うと判断していた。


(左に半歩。剣は下から受け流す)


考えるより先に、足が動いていた。


半歩踏み込み、ガロンの一撃を真正面から受けるのではなく、木剣の腹で斜めに逸らす。


重い衝撃に備えていたガロンの体勢が、逸らされた力の分だけわずかに泳いだ。


「なっ――」


その隙を、セレスは見逃さなかった。


逸らした剣をそのまま返し、崩れたガロンの脇腹めがけて木剣を滑り込ませる。


「――そこ」


乾いた音とともに、木剣の先端がガロンの脇腹を捉えた。


「ぐっ……!?」


一本。


ガロンは信じられないという顔で後ずさりしたが、すぐに体勢を立て直した。


「今のは……まぐれ、だろ」


「かもね」


答えながらも、セレスの中では確信に近いものが芽生え始めていた。


まぐれではない。


体が、明確に「知っている」動きだった。


二戦目、三戦目も、大筋は同じだった。


ガロンの繰り出す一撃を、セレスは最小限の動きで受け流し、体勢を崩したところへ確実に一本を返していく。


力比べでは到底敵わないはずなのに、間合いと呼吸の読み合いでは、なぜか一歩も譲らなかった。


結果として、その日のうちに三本すべてを取られたガロンは、額に汗を滲ませながら、しばらく言葉を失っていた。


「な、なんなんだ、お前は……」


「無色だけど?」


「それは分かってる! いや、分かってねえよ。もう何も分かんねえ!」


頭を抱えるガロンの隣で、見学していたミュゼが目をキラキラさせながら手を叩いていた。


「すごい、すごいです! セレスさん、やっぱり無色なんかじゃないですよ!」


「無色は無色だよ。水晶にはそう出るし」


「じゃあ水晶がおかしいんです、絶対!」


あまりに真っ直ぐな言葉に、セレスは思わず噴き出しそうになった。


数字や鑑定などお構いなしに、目の前の結果だけを信じるミュゼの姿勢は、いっそ清々しいとすら思えた。



その日の夕方、セレスがギルドの受付を通りかかると、先ほどの受付嬢が目を丸くしていた。


「セレスさん、聞きましたよ! ガロンさんのパーティーに加入されたとか。しかも手合わせで三戦三勝したって、もう町中の噂になってます」


「早いな、噂」


「無色判定を受けて、その日のうちにパーティー入りして、ガロンさんを打ち負かすなんて……前代未聞ですよ」


周囲の冒険者たちも、ちらちらとこちらに視線を向けている。


先ほどまでの憐れむような視線とは、明らかに質が違っていた。


(無色、無色、ね)


セレスは軽く肩をすくめると、そのままギルドを後にした。


数字で測れないものを、周りがどう評価し直していくのか――それを眺めるのも、案外悪くない娯楽かもしれない。


手首の紋様が、また微かに疼いていた。


(次は、どんな力を借りることになるんだろうな。それに――この体に染みついてる「何か」も、もう少し掘り下げた方がよさそうだ)


誰に言うでもなく呟いて、セレスは夕暮れの町を歩いていった。

4話をお読みいただきありがとうございます!

正式にパーティー入りしたセレスと、元気系ヒロインのミュゼが初登場しました。さらに、ガロンとの手合わせで判明した「なぜか馴染んでいる剣術の心得」……この違和感の正体は、物語の中盤で明かされていきます。

ミュゼはセレスの正体には気づいていませんが、実は彼女自身も過去に「才能なし」と言われた経験の持ち主。この二人の関係も、これから深掘りしていきたいと思います。

無色だったはずのセレスが、周囲の評価をどんどんひっくり返していく――そんな展開を引き続きお届けしていきます。次話もお楽しみに!

★評価・ブックマーク、感想でのコメント、いつも励みになっています。ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ