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女神の勘違いで女の子に転生した俺、ギルドで測定不能と言われたけど普通に無双してました  作者: 夜華カナタ
第二章 地下遺跡と銀仮面

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第三十八話 五人でつなぐ光

一人で強くなることと。


誰かと一緒に強くなることは。


似ているようで、たぶん全然違います。


今回は、五人で進むための戦いです。

黒赤い鎖に縛られたまま。


セレスは、ゆっくりと目を開けた。


視界に映るのは、巨大な白い結晶。


その周囲を覆う黒赤い鎖。


そして、結晶の前に立つ銀仮面の男。


「……まだ意識があるとはな」


男の声が、遠く聞こえた。


「紋様の光は、ほとんど抜き取った。もう仲間の力を借りることもできないはずだ」


セレスは左手首を見る。


そこに刻まれた白銀の紋様は、以前より小さく見えた。


けれど。


消えてはいない。


淡い光が、確かに残っていた。


「借りない」


セレスは言った。


銀仮面の男が、わずかに眉を動かす。


「何?」


「もう、一人で借りない」


セレスは、黒赤い鎖へ手を伸ばす。


力は残っていない。


腕も重い。


けれど、白銀の紋様へ意識を向ける。


誰かの強さを奪うためではない。


誰かの隣に立つために。


「繋ぐ」


白銀の光が、手首から広がった。


細い。


けれど、途切れない光。


それは黒赤い鎖の隙間を縫うように伸びていく。


石壁の向こう。


ガロンの元へ。


ミュゼの元へ。


イリスの元へ。


レイフィアの元へ。


「……セレス?」


ミュゼの声が響いた。


白銀の線が、彼女の手首に触れる。


続けて。


ガロン。


イリス。


レイフィア。


四人の手首に、淡い白銀の光が灯った。


「何だ、この光は」


ガロンが低く呟く。


目の前の黒い壁を、大剣で何度も叩きつけていた。


壁は割れても、黒赤い光がすぐに傷を塞いでいく。


「セレスの紋様が……また繋がっている」


イリスが言う。


彼女の剣に、淡い白銀の光がまとわりついた。


「でも、前とは違うわ。力を抜き取られているはずなのに」


「……違う」


レイフィアは、自分の手首を見る。


「セレスが、一人で使っているんじゃない」


レイフィアは白銀の線へ手を重ねた。


セレスの胸に、細い光が流れ込む。


そこには、レイフィアの痛みがあった。


助けられなかった過去。


それでも今度は逃げないと決めた強さ。


セレスはそれを受け取る。


そして、抱え込まない。


白銀の線を通して、皆へ返す。


「一緒に」


レイフィアが小さく言う。


「ええ」


イリスが剣を握り直した。


「使うのは、私たちの力よ」


ガロンが大剣を肩へ担ぐ。


「なら、俺の分は壁を壊すために使え」


「私はセレスを守る!」


ミュゼが杖を掲げた。


四人の意思が。


白銀の線を通じて、セレスへ届く。


次の瞬間。


ガロンの大剣が、白銀の光をまとった。


「おおっ!」


大剣が黒い壁へ振り下ろされる。


轟音。


これまで何度壊しても再生していた壁に、白いひびが走った。


黒赤い光が、ひび割れた場所から消えていく。


「いける!」


ガロンがもう一度、大剣を振るう。


壁が大きく砕けた。


土煙の向こうに、セレスの姿が見える。


「セレス!」


ミュゼが駆け出す。


だが、銀仮面の男が片手を上げた。


床から黒赤い鎖が、無数に飛び出す。


「近づかせると思うか」


鎖がガロンへ。


ミュゼへ。


イリスへ。


レイフィアへ向かう。


「下がれ!」


ガロンが前へ出る。


大剣を振るい、鎖を受け止めた。


しかし鎖は一本ではない。


横から。


後ろから。


次々に迫る。


「ミュゼ!」


「うん!」


ミュゼの杖から、緑色の光が広がる。


白銀の線を通して、彼女の回復魔法が仲間へ流れていく。


疲労した身体へ、温かい力が満ちる。


ガロンの腕に残っていた痛みが和らぎ。


レイフィアの古い傷の熱が薄れ。


セレスの身体にも、力が戻ってくる。


「いい加減に……!」


イリスが踏み込む。


剣に白銀の光が重なる。


彼女の剣筋は、まっすぐだった。


迷いなく。


黒赤い鎖の中心を斬り抜く。


「断つ!」


鎖が、一本ずつ切れていく。


ただ斬るのではない。


術式の流れを見極め、最も弱い場所を断ち切る。


黒赤い光が悲鳴のように揺らいだ。


「右に三本!」


レイフィアが叫ぶ。


細剣を走らせる。


白銀の光をまとった刃が、鎖の隙間を縫う。


イリスが断ち切れなかった細い術式を、正確に貫いた。


鎖の動きが止まる。


そして。


セレスの腕を縛っていた鎖が、ひび割れた。


「今だ!」


ガロンの声。


セレスは、残った力で腕を引いた。


黒赤い鎖が砕ける。


身体が石床へ落ちた。


「セレス!」


ミュゼが駆け寄り、支える。


「大丈夫?」


「大丈夫」


セレスは立ち上がる。


剣を拾う。


腕輪は少し離れた場所に落ちていた。


レイフィアが拾い上げ、セレスの手首へ戻した。


「隠す必要は、もうないかもしれないわね」


「そうかも」


腕輪の下で、白銀の紋様が光る。


今度の光は、セレス一人から生まれているわけではない。


五人の間を繋ぐ。


途切れない光だった。


「くだらない」


銀仮面の男が、低く言った。


結晶の前に立ち、黒赤い鎖を操る手を強く握る。


「力とは、強き者が弱き者を導くためのものだ。分け合えば、薄まるだけだ」


「違う」


セレスは答えた。


「分けてない」


ガロンが、セレスの隣へ立つ。


「増やしてるんだ」


ミュゼが、セレスの反対側へ並ぶ。


「みんなで一緒に守るんだよ」


イリスが剣先を銀仮面へ向けた。


「一人で全部決めるあなたには、分からないでしょうけど」


「……」


レイフィアは、静かに細剣を構える。


「誰かを壊して得る力より、誰かと生きるための力のほうが強い」


銀仮面の男の仮面の奥で、目が揺れた。


怒り。


あるいは、理解できないものを見るような感情。


「なら、証明してみろ」


男が両手を広げた。


巨大な結晶から、黒赤い線がいくつも伸びる。


床に散らばっていた黒い鎧。


倒れていた強化兵たち。


そして、遺跡の奥に残されていた実験兵たちへ。


「お前たちが救った者たちを、もう一度壊してやる」


「やめろ!」


セレスが叫ぶ。


黒赤い線が、倒れている実験兵たちの偽紋様へ繋がる。


何人もの身体が、苦しそうに跳ねた。


黒い霧が溢れ出す。


「戻せ!」


ミュゼが駆け寄ろうとする。


しかし、実験兵たちの身体から黒い甲殻が生え始めた。


さっき救った人たちが。


再び怪物へ変わろうとしている。


「……許さない」


セレスの声が低くなる。


白銀の光が、五人の間で強く脈打った。


「ガロン、前を止めて」


「任せろ!」


ガロンが大剣を構え、暴走し始めた実験兵たちの前へ立つ。


「イリス、レイフィア。紋様へ入る道を作って」


「分かった」


「ええ」


二人が左右へ散る。


イリスの剣が、黒い甲殻を斬り裂く。


レイフィアの細剣が、偽紋様を覆う鎖を正確に断つ。


「ミュゼ、まだ意識が残ってる人を頼む」


「うん!」


ミュゼの回復魔法が、暴走する実験兵たちを包む。


苦しむ声。


怯える目。


その奥にいる人たちへ、温かい光が届いていく。


「セレス!」


ガロンが叫ぶ。


大剣で一体を受け止めながら、歯を食いしばっている。


「今だ!」


セレスは走った。


五人を繋ぐ白銀の線が、背中を押す。


最初の実験兵へ触れる。


黒赤い紋様の奥にある恐怖が流れ込む。


だが。


今度は、一人で抱えない。


ガロンの強さが、恐怖を受け止める。


ミュゼの優しさが、痛みを包む。


イリスの剣が、偽りの鎖を断つ。


レイフィアの細い光が、沈んだ意識を見つけ出す。


「戻れ」


セレスは言った。


「お前は、誰かの道具じゃない」


白銀の光が、偽紋様を包む。


黒赤い線が、一本ずつ消えていく。


実験兵の目に、光が戻る。


続けて二人目。


三人目。


五人の連携は、止まらなかった。


救うたびに。


白銀の光は少しずつ強くなる。


銀仮面の男の黒赤い鎖は、逆に弱まっていく。


「あり得ない……」


男が呟いた。


「人の願いは、一人ずつ閉じたものだ。誰かと繋げば、必ず壊れる」


「違う」


セレスは最後の実験兵へ手を伸ばす。


「お前が、そうさせてきただけだ」


白銀の光が弾けた。


最後の偽紋様が鎮まる。


黒い甲殻が崩れ落ち、実験兵たちはその場に倒れ込んだ。


全員、生きている。


ミュゼが一人ずつ確認し、涙ぐみながら頷いた。


「助かった……みんな、助かったよ」


その言葉が。


銀仮面の男の顔から、最後の余裕を消した。


男はゆっくりと、巨大な結晶を見上げる。


「ならば……これ以上、お前たちに遊ばせるわけにはいかない」


男が、自分の左手袋を外した。


その下には。


黒赤い偽紋様があった。


これまで見たどの紋様よりも、濃く。


深く。


腕から肩へ。


首筋へ。


そして、仮面の下へまで伸びている。


「やめろ」


セレスは言った。


「それを使えば、お前も壊れる」


「壊れる?」


銀仮面の男は、静かに笑った。


「力を得るためなら、壊れても構わない」


男が偽紋様へ、白銀の結晶から伸びた光を流し込む。


黒赤い紋様が、激しく輝いた。


地下空間が揺れる。


結晶が悲鳴のような音を立てる。


銀仮面の男の身体が、黒赤い光に飲まれていく。


「次は私が証明しよう」


仮面が、ぱきりと割れた。


その奥から見えた男の目は。


赤く染まりながらも。


どこか、泣きそうだった。

あとがき

第三十八話を読んでいただき、ありがとうございます!


セレスは、奪われかけた力を「一人で借りる力」ではなく、仲間と繋ぐ力として取り戻しました。


そして、救われた実験兵たちを再び壊そうとした銀仮面は、自ら未完成の偽紋様を刻みます。


次回、銀仮面が求めた力と、彼がそこまでして叶えたかった願いが明かされます。


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