第十八話 地下水路の異変
大都市の地下水路へ、初仕事に向かったセレスたち。
……のはずが、待っていたのは行方不明の冒険者と、
粘液まみれで妙に元気な魔物の群れでした。
しかも、初対面の赤髪剣士・レイフィアとは、
なぜか背中合わせの連携が妙にしっくりくる始末。
地下は暗い。足場は悪い。魔物は気持ち悪い。
そして水路の奥には、
「たぶんボスです」としか言えない気配が待っています。
「まずは足慣らしに、街の依頼をいくつかこなしてもらいたい」
ギルド職員から手渡されたのは、街の地下に張り巡らされた水路で発生している異変の調査依頼だった。
「地下水路?」
「はい。最近、水路内で魔物の目撃情報が急増していまして。銀ランク級の応援パーティーには、まずこの調査をお願いしたいのです」
「了解した」
ガロンが依頼書を受け取ると、四人は早速、街の外れにある水路の入口へと向かった。
「――お、また会ったわね」
入口で待っていたのは、意外なことに、あのレイフィアだった。
「あんたも同じ依頼か」
「そ。この街の水路調査、実はもう三人組が行方不明になっててね。私が様子見に来たってわけ」
「行方不明?」
物騒な単語に、ミュゼが不安げな表情を浮かべる。
レイフィアは気だるげに肩をすくめた。
「別に脅かしてるわけじゃないわ。ただの警告。この街の地下、思ったよりも複雑で、思ったよりも物騒だから」
「なら、一緒に行くか」
セレスの提案に、レイフィアは意外そうに片眉を上げた。
「あんたたちと組む気はないんだけど」
「安全のためだよ。人数は多い方がいい」
「……まあ、いいわ。目的地までは付き合ってあげる」
渋々といった様子で頷くレイフィアを先頭に、五人は水路の入口へと足を踏み入れた。
水路の中は、思っていた以上に薄暗く、じめじめとしていた。
松明の明かりを頼りに進むと、時折、水音とは違う何かが蠢くような気配が伝わってくる。
「気配、増えてきてる」
イリスが低く呟いた瞬間、闇の奥から無数の光る目が一斉にこちらを見据えた。
「――来るわよ!」
レイフィアが叫ぶと同時に、闇の中から粘液に覆われた不気味な魔物の群れが姿を現した。
「うわ、気持ち悪い……!」
「怯んでる場合か、ミュゼ!」
ガロンが大剣を構え、先頭を切って突撃する。
レイフィアも細剣を抜き、流れるような動きで敵を斬り伏せていった。
「あんた、思ったよりやるじゃない」
セレスと背中合わせになったレイフィアが、軽口混じりに言う。
「褒め言葉として受け取っておく」
「そうしなさい」
二人は自然と連携を取りながら、押し寄せる魔物を捌いていく。
初めて組む相手とは思えないほど、二人の動きは噛み合っていた。
「――奥に、何かいる」
群れがひと段落ついた頃、イリスが水路の奥を指差した。
松明の明かりが届かない、深い闇の向こうから、これまでとは比べ物にならないほど大きな気配が漂ってくる。
「本命は、あそこか」
セレスの手首の紋様が、静かに熱を帯び始めた。
「――行くしかないみたいね」
レイフィアは不敵に笑い、細剣を構え直す。
五人は、水路の奥へと足を進めていった。
あとがき
第十八話をお読みいただき、ありがとうございます!
今回は、レイフィアとの共闘回でした。
初対面ながらも息の合うセレスとレイフィアの連携は、書いていてとても楽しかったです。水路の奥に潜む何かについては、次話で明らかになります。
ヴェルンハイム編は、これからさらに賑やかになっていく予定です。ぜひお楽しみに!
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