第十七話 大都市のギルド
大都市ヴェルンハイムのギルドに着いた初日。
セレスは受付で普通に手続きをしただけでした。
……しただけのはずでした。
なのに、なぜか周囲がざわつき始めて、
気づけば「無色の少女」が妙に注目を集めることに。
新天地でも、平穏は借りられなさそうです。
ヴェルンハイム冒険者ギルドの内部は、これまで見てきたどのギルドよりも遥かに広く、そして騒がしかった。
「うわあ……人、多いですね」
ミュゼが目を丸くしながら、周囲を見回す。カウンターの数だけでも十を超え、壁一面に貼られた依頼書は数えるのも億劫になるほどの量だった。
「まずは転属の手続きだな」
ガロンが受付の一つに向かい、事情を説明する。
しばらくすると、恰幅の良い中年の男性職員が対応に現れた。
「話は聞いています。地方からの応援パーティーですね。ようこそ、ヴェルンハイムへ」
「よろしく頼む」
「ええと……皆さんの実績を拝見しましたが……」
職員は手元の資料に目を通しながら、ふと眉をひそめた。
「この、無色判定のセレスさんというのは……本当に、あの『湖の主』を討伐したという?」
「本人だよ」
セレスが軽く手を挙げると、職員は驚いたように目を見開いた。
「これは失礼しました。地方での噂は、こちらにも届いておりまして……いや、実物を前にすると、また違った驚きがありますね」
「よく言われる」
「実は、皆さんにお願いしたい仕事がいくつかありまして。この街は慢性的に、銀ランク以上の人手が不足しているんです。特に――」
職員がそう言いかけた、その時だった。
「――あら、新顔?」
背後から、涼やかな声が割り込んできた。
振り返ると、そこには鮮やかな赤髪を短く切り揃えた女性が立っていた。腰には、見るからに業物と分かる細剣を提げている。
「レイフィアさん」
職員が慌てたように声を上げる。
レイフィアと呼ばれた女性は、値踏みするような目で四人を順に眺めていった。
「地方の応援組、って聞いてたけど……へえ」
彼女の視線が、セレスの上で止まる。
「無色、って言った?」
「そうだけど」
「ふうん」
レイフィアは興味深そうに口の端を上げると、そのまま気だるげにカウンターへともたれかかった。
「面白そうじゃない。今度、手合わせでもしてみる?」
「レイフィアさん、困りますよ。また急に……」
職員が困惑した様子で割って入るが、レイフィアは意に介さない様子だった。
「この街、あんたが思ってるより物騒よ。地方の噂話くらいで気を抜かない方がいい」
「忠告、ありがとう」
「別に、忠告のつもりはないけど」
軽く肩をすくめると、レイフィアはそのまま踵を返し、雑踏の中へと消えていった。
「……なんだったんだ、今の」
ガロンが呆れたように呟く。
職員は苦笑しながら、小声で説明した。
「レイフィアさんは、この街を拠点にする銀ランクの冒険者です。実力は確かなんですが、少々……その、我が強い方でして」
「面白い人だな」
セレスの感想に、イリスがじろりと視線を寄越した。
「あんた、変わった人に懐かれる才能でもあるの?」
「さあ」
軽くはぐらかしながら、セレスはギルドの喧騒に視線を戻した。
地方の町とは明らかに違う、この街特有の緊張感と活気。
どうやら、これからの物語は、これまで以上に賑やかになりそうだった。
第十七話をお読みいただき、ありがとうございます!
ヴェルンハイム編が始まり、早速新キャラクターのレイフィアが登場しました。
我が強くてマイペースな彼女が、これからセレスたちのパーティーとどう関わっていくのか。書いている側としても、とても楽しみなキャラクターです。
大都市らしい賑やかさと、新たな刺激に満ちた冒険を、これからも描いていきます。
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次話もぜひお楽しみに!




