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女神の勘違いで女の子に転生した俺、ギルドで測定不能と言われたけど普通に無双してました  作者: 夜華カナタ
第一章 無色判定、はじまる

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第十三話 借り物と、借り物じゃないもの

借りられないなら、別のやり方を考えればいい。


セレスにとっては、それだけの話です。

借り物の力と、自分自身の判断で切り開く街道戦の続き。


全身に満ちる重い力を纏ったまま、セレスは地を蹴った。


「――ぐっ!」


振り下ろされた男の剣を、真正面から受け止める。


普段のセレスなら弾き飛ばされていたであろう一撃を、今度はしっかりと受け切っていた。


「……なんだと?」


男の顔に、初めて動揺の色が浮かんだ。


「言っただろ。今度はこっちの番だって」


セレスは力任せに剣を押し返すと、そのまま懐へ踏み込んだ。


ガロンの動きを借りているとはいえ、それをどう使うかは自分次第だ。


体重の乗せ方。踏み込みのタイミング。


借りた型に、自分自身の判断を重ねていく。


「――そこ」


鋭く踏み込み、男の脇腹へと剣を叩き込む。


確かな手応えがあった。


「がっ……!」


男が大きくよろめいた瞬間、横合いから飛び込んできたイリスの剣が、追い打ちをかけるように男の得物を弾き飛ばした。


「――終わりよ」


「くっ……」


武器を失った男は、じりじりと後退する。


周囲を見渡せば、部下たちもすでにガロンとミュゼによって制圧されていた。


「……今日のところは、退かせてもらう」


男はそう吐き捨てると、煙玉のようなものを地面に叩きつけた。


白煙が視界を覆い、その中で逃走を図る気配がする。


「――逃がすかよ!」


ガロンが追おうとする。


だが、煙が晴れた頃には、男の姿はすでになかった。


「……逃げられたか」


「ええ。悔しいけど、今日は仕方ないわ」


イリスは剣を鞘に収めながら、苦い顔をする。


「大丈夫です! 御者さんを保護しました!」


ミュゼの声に、四人は荷馬車の方へと視線を向けた。


怪我を負った御者は、ミュゼの応急処置によって、ひとまず命に別状はなさそうだった。


「あ、ありがとうございます……! 皆さんのおかげで、助かりました」


「無事で良かった。町まで送るから、動けそうか?」


ガロンが優しく声をかける。


御者は涙ぐみながら、何度も頭を下げた。


町への帰り道、セレスは自分の右腕へ視線を落としていた。


ガロンから借りた力は、すでに元の感覚へ戻っている。


だが、あの戦闘の中で得た手応えは、まだ鮮明に残っていた。


「――さっきのあれ、なかなか良い判断だったわね」


隣を歩くイリスが、珍しく素直にそう言った。


「借りられないなら、借りられるものを探す。悪くない発想よ」


「褒めてる?」


「褒めてるのよ。ちゃんと」


セレスは小さく笑うと、視線を空へ向けた。


「あの男、何者だったんだろうな」


「分からないわ。でも、あの紋様……最近、あちこちで似たような報告を聞くようになってきてる」


イリスの声には、いつになく真剣な響きがあった。


「何か知ってるのか?」


「まだ確証はないの。ただ――」


彼女はそこで一度言葉を切る。


少し逡巡するような間を置いてから、静かに続けた。


「もしかしたら、私が昔から追ってる相手と繋がりがあるかもしれない」


その言葉には、これまでのイリスからは感じたことのない重みがあった。


セレスは何も言わず、ただ静かに耳を傾ける。


「――いつか、ちゃんと話すわ。今は、まだ」


「うん。急がないよ」


あっさりと答えるセレスに、イリスは少し驚いたような顔をした。


それから、小さく笑う。


「そういうところ、あんたは本当に変わってるわね」


「褒めてる?」


「さあ、どうかしら」


同じやり取りを、また一つ重ねながら。


二人は仲間たちの後を追って、歩き出した。


街道に落ちていた小さな謎は、まだ何一つ解けていない。


それでもパーティーは確かに、また一歩、前へと進んでいた。

第十三話をお読みいただき、ありがとうございます!


街道事件編は、ひとまず今回で決着です。


ガロンから借りた力を、ただ使うだけではなく、自分自身の判断で活かしていく。そんなセレスの成長を感じていただけていたら嬉しいです。


そして、ついにイリスが自分の過去について少しだけ触れました。


彼女が「昔から追っている相手」とは何者なのか。今回現れた賞金首の男や、謎の紋様ともどんな関係があるのか。今後、イリスの背景も本格的に掘り下げていく予定です。


賞金首の男は逃してしまいましたが、彼もまた後々の物語に関わってきます。ぜひ覚えておいていただけると嬉しいです。


★評価、ブックマーク、感想でのコメントは、いつも大きな励みになっています!


次話もよろしくお願いいたします!

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